SNSは本当に心を悪くするのか?

この記事の読みどころ
  • SNSの使い方は「受動的」「公開型の積極利用」「個人的な積極利用」の三タイプに分かれる。
  • 心の健康には自己決定・有能感・関係性の三つの欲求が影響し、個人的な会話は関係性を高め生活満足度を上げる。
  • 現実の人間関係の質によってSNSの効果は変わり、関係が弱い人には公開型の投稿が、関係が良い人には個別のチャットがプラスになる。

― 青少年のメンタルを左右する「使い方」と「人間関係」

私たちはよく、SNSについてこんな言い方を耳にします。

「SNSは若者のメンタルを悪くする」
「SNSは孤独や不安を増やす」

しかし、本当にそうなのでしょうか。

ある人はSNSで友人とのつながりを深め、楽しい時間を過ごします。
一方で、別の人はSNSを見て落ち込んだり、孤独を感じたりします。

同じSNSなのに、なぜこんな違いが生まれるのでしょうか。

この疑問を解こうとした研究があります。
研究のテーマは、「SNSの使い方の違い」と「現実の人間関係」が、若者の心の健康にどのように関係するのかというものです。

この研究では、SNSの使い方を単純に「多いか少ないか」ではなく、どのように使っているのかという視点から詳しく調べました。
その結果、SNSと心の健康の関係は、これまで考えられてきたよりもはるかに複雑であることが明らかになりました。


SNSには三つの使い方がある

研究では、SNSの使い方を三つのタイプに分けました。

1 受動的利用(パッシブ利用)

これは、自分では投稿やコメントをせず、
ただ他人の投稿を見ている使い方です。

例えば、

・友人の投稿を読む
・動画を眺める
・タイムラインをスクロールする

といった行動です。

2 公開型の積極的利用

これは、多くの人に向けて投稿する使い方です。

例えば、

・近況を投稿する
・写真や動画を公開する
・自分の意見を書く

といった行動です。

3 個人的な積極的利用

これは、特定の人と直接やり取りする使い方です。

例えば、

・チャット
・メッセージ
・一対一の会話

といったものです。

つまりSNSには、

見る
発信する
会話する

という三つの使い方があると考えられます。


心の健康を支える三つの心理的欲求

研究ではさらに、人間の心の健康にとって重要な三つの欲求に注目しました。

これは自己決定理論という心理学の理論で提案されているものです。

その三つとは、

自律性(オートノミー)
自分の意思で行動していると感じること

有能感(コンピテンス)
自分はうまくできていると感じること

関係性(リレーテッドネス)
人とつながっていると感じること

です。

この三つが満たされていると、人は

・幸福感が高く
・精神的に安定し
・うつ状態になりにくい

ことが知られています。

つまり研究の核心はこうです。

SNSの使い方

心理的欲求が満たされるかどうか

心の健康

この関係を調べることでした。


青少年343人を5か月追跡した研究

研究では、11歳から17歳までの中国の青少年を対象に調査が行われました。

参加者は343人で、
最終的に227人が2回の調査に参加しました。

調査は二回行われました。

最初の調査では

・SNSの使い方
・現実の人間関係の質
・心理的欲求
・うつ症状
・生活満足度

などを測定しました。

そして5か月後にもう一度同じ項目を測定し、変化を分析しました。

このように時間を空けて追跡する研究をパネル研究と呼びます。

この研究は、
清華大学のジャーナリズム・コミュニケーション学部を中心とした研究チームによって行われました。


SNSは「直接」メンタルを悪くしない

まず最も重要な結果があります。

それは、

SNSの使い方は、直接的にはメンタルヘルスに影響しなかった

ということです。

つまり、

・SNSを見る
・投稿する
・チャットする

といった行動は、それだけで

・うつを増やす
・幸福感を下げる

といった効果は確認されませんでした。

これは意外な結果かもしれません。

SNSはよく

「メンタルに悪い」

と単純に語られます。

しかし研究の結果は、
そのような単純な関係は存在しないことを示しています。

SNSの影響はもっと複雑なのです。


個人的な会話は幸福感を高める

一つだけ明確な効果が見つかりました。

それは、

個人的なSNSの会話(チャットなど)

です。

この使い方は、

人とのつながりの感覚
(関係性の欲求)

を高めることが分かりました。

そしてその結果、

生活満足度が高くなる

ことが確認されました。

つまり、

友人とメッセージで会話する

人とのつながりを感じる

生活の満足度が上がる

という流れです。

SNSは、人とのつながりを維持する道具として使われると、
ポジティブな影響を持つ可能性があるということです。


しかし結果は人によって変わる

研究の最も興味深い結果はここからです。

SNSの効果は、

現実の人間関係の質

によって変わることが分かりました。

つまり、

SNSの影響は
人によって全く違うのです。


現実の関係が弱い人にはSNSが助けになる

現実の人間関係があまり良くない若者の場合、

公開型のSNS利用

がポジティブに働くことがありました。

例えば

・投稿する
・近況を書く
・意見を発信する

といった行動です。

こうした行動は、

自分はできる
自分には価値がある

という有能感

自分の意思で行動している

という自律性

を高める効果がありました。

その結果、

・うつが減り
・生活満足度が高まる

という効果が見られました。

つまりSNSが、

現実の人間関係で満たされない部分を補う可能性があるのです。

研究者たちはこれを

「貧しい者が豊かになる」仮説

と呼んでいます。


人間関係が良い人はさらに良くなる

一方で、現実の人間関係が良い若者では別のパターンが見られました。

この場合、

個人的なSNSの会話

が強く効果を持ちました。

すでに友人関係が良い人は、

SNSのチャットなどを通して

・関係を深め
・つながりを強め

その結果、

生活満足度がさらに高まる

傾向がありました。

これは

「豊かな者がさらに豊かになる」

というパターンです。


SNSの効果は人間関係の延長にある

この研究の重要な結論は次の通りです。

SNSは、
現実の人間関係と切り離された世界ではない

ということです。

SNSは、

現実の人間関係を

・補うことも
・強めることも

あります。

つまりSNSは

現実とは別の世界ではなく

現実の人間関係の延長

として働いているのです。


「SNSは悪い」という考えの限界

今回の研究は、SNSについての単純な見方に疑問を投げかけています。

SNSは、

悪いもの
良いもの

という単純なものではありません。

重要なのは

どう使うか

そして

どんな人間関係を持っているか

です。

ある人にとってSNSは

孤独を強めるもの

になるかもしれません。

しかし別の人にとっては

自信やつながりを生む場所

になる可能性があります。

SNSの影響を理解するには、

SNSそのものだけではなく、

人間関係の環境

を見る必要があるのです。

(出典:Psychology Research and Behavior Management DOI: 10.21474/IJAR01/10480

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