コロナのときに生まれた子どもたちは、いまどうなっているのか

この記事の読みどころ
  • コロナ期に生まれた子どもは、切り替えの力や手先の動きがやや弱い傾向が見られました。
  • 言葉の力は大きな差はないものの、1〜2歳の時期にはやや低い傾向や中耳炎・言語療法の受診増が見られました。
  • 親のがんばりはほぼ同じで、就学前に遊びや対面の交流・手先の練習を増やす支援が大切だと示されています。

あのとき、お腹に赤ちゃんがいた人。
あのとき、生まれたばかりの赤ちゃんを抱えていた人。

私たちは、感染対策やワクチンの話をたくさんしてきました。
でも、あの時代に生まれた子どもたちの成長については、まだあまり語られていません。

カナダの大学の研究チームが、3〜5歳になった子どもたちを調べました。

・コロナ前に生まれた子ども
・コロナが始まったころ、お腹の中にいた、あるいは生後5か月以内だった子ども

この2つのグループを比べたのです。

そして、はっきりした違いが見つかりました。


いちばん差が出たのは「切り替える力」

研究では、保護者にアンケートをして、子どもの行動の様子を評価しました。

たとえばこんな場面です。

・遊びをやめて次の活動に移れるか
・予定が変わったときに対応できるか
・気持ちを切り替えられるか
・我慢できるか

こうした力は、学校に入る前の大事な土台になります。

結果はどうだったのでしょうか。

コロナの時期に生まれた子どもたちは、
「切り替えのむずかしさ」がより多く報告されていました。

全体として、落ち着いて行動する力や、柔軟に対応する力がやや弱い傾向が見られたのです。

これは、コロナが終わった後に調べても残っていた違いです。


手先の動きにも差があった

もうひとつ、はっきりしていたのが「手先の動き」です。

・はさみを使う
・ボタンをとめる
・小さなものをつまむ
・線にそって描く

こうした細かい動きの力が、コロナ期に生まれた子どもたちのほうがやや低い結果でした。

手先の力は、文字を書くことや工作など、学習の準備にもつながります。


言葉の力はどうだったのか

意外なことに、単語の理解力には大きな差はありませんでした。

ただし、コロナが始まったとき1〜2歳だった子どもたちには、やや低い傾向が見られました。

ちょうど言葉が一気に増える時期と、外出制限が重なっていた世代です。


中耳炎や言語療法の増加

保護者からの報告では、コロナ期に生まれた子どもたちは、

・中耳炎をくり返している
・言葉の相談や療法に通っている
・発達のチェックで遅れを指摘された

といった回答が多くなっていました。

特に中耳炎は、早い時期に何度もくり返すと、聞こえや言葉の発達に影響する可能性があります。

ただし、この研究では「中耳炎が直接、言葉の力を下げた」とまでは言えませんでした。


親のがんばりは十分だった

興味深いのは、親の状況です。

親のがんばりや支え合いの力は、2つのグループでほとんど差がありませんでした。

スクリーンタイムにも大きな差はありませんでした。

つまり、

「親ががんばらなかったから」では説明できない違いなのです。


何が影響したのか

研究では、いくつかの可能性が挙げられています。

・人と会う機会が少なかった
・マスクで口の動きが見えにくかった
・支援や医療が受けにくかった
・妊娠中の不安やストレスが強かった

特に大事なのは、「いつ影響を受けたか」です。

コロナ期に生まれた子どもたちは、

・お腹の中
・生まれてすぐ

という、脳が急速に成長する時期に社会の変化を経験しました。

一方で、コロナ前に生まれた子どもたちは、平均すると1歳半ごろにその変化を経験しています。

この時期の違いが、小さな差を生んだ可能性があります。


取り戻せない差なのか

この研究は、「もう手遅れだ」とは言っていません。

むしろ、支援の必要性を強く訴えています。

就学前のいまこそ、

・遊びの機会
・手先を使う活動
・対面での交流
・ていねいな見守り

を増やすことが大切だと示唆しています。


私たちは何を考えるべきか

パンデミックは、命を守るための対策でした。

しかし同時に、
「社会的なつながり」がどれほど子どもの成長に関わっているかも浮き彫りにしました。

探索すること。
人の表情を見ること。
声を聞き、まねをすること。
予定が変わる経験をすること。

それらは、当たり前のようで、実はとても大切な栄養だったのです。

コロナのときに生まれた子どもたちは、
いま、ちょうど学校に入ろうとしています。

その小さな違いに気づき、
早めに支えることができるかどうか。

それは、これからの私たち次第です。

(出典:Behavioral Sciences

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