急進派そのものではなく、穏健派の態度が鍵だった

この記事の読みどころ
  • 急進派がいると穏健派の評価がどう変わるかを実験で調べた。
  • 結果は「穏健派が急進派と距離を取る」場合に支持が高まるというものだった。
  • 気候対策全体への支持は変わらず、対比の見え方と穏健さの知覚・自己同一視が理由として挙げられた。

急進派から距離を取ると、穏健派は支持されるのか

気候変動をめぐる抗議行動は、この数年で大きく変化しました。
許可を取ったデモ行進や署名活動のような比較的穏やかな方法もあれば、道路封鎖や建物へのスプレー行為といった強い反発を呼ぶ方法もあります。

では、こうした「急進的」な活動が存在するとき、同じ運動の中にいる「穏健な団体」はどう見られるのでしょうか。

急進派の存在は、穏健派の評価を下げるのか。
それとも、対比によってかえって好意的に見られるのか。

この問いを実験によって検証したのが、ウィーン大学(University of Vienna)を中心とする研究チームによる研究です。論文は2026年に『Communications Psychology』に掲載されました。


ラディカル・フランク効果とは何か

研究が扱ったのは「ラディカル・フランク効果(radical flank effect)」と呼ばれる現象です。

社会運動の中に、より急進的な「周辺グループ(フランク)」が存在するとき、中心的な穏健グループ(センター)の評価がどう変わるかを指します。

理論的には、二つの可能性があります。

第一に、急進派の悪い印象が穏健派にも広がる「ネガティブ効果」。
第二に、急進派との対比によって穏健派がより理性的に見える「ポジティブ効果」です。

これまでの研究では、両方の結果が報告されており、どの条件でどちらが起きるのかははっきりしていませんでした。


実験のしくみ

研究チームは、オーストリア在住の成人1,407人を対象にオンライン実験を行いました。参加者は気候活動家ではない一般市民です。

参加者は架空の新聞記事を読みます。そこには二つの気候団体が登場します。

一つはフランク団体。
もう一つはセンター団体です。

フランク団体は、
・急進的な戦術を使う条件
・穏健な戦術を使う条件
のいずれかに割り当てられます。

センター団体は常に穏健な戦術を使いますが、フランク団体に対して

・距離を取る
・支持・協力を表明する

のどちらかの立場を取ります。

つまり実験は、「フランクの急進性(急進 vs 穏健)」×「センターの立場(距離を取る vs 支持する)」という2×2の構造で行われました。


結果:距離を取ったときだけ支持が高まる

結果は明確でした。

急進派が存在するとき、センターが急進派と「距離を取った場合にのみ」、センターへの支持が高まりました。

逆に、センターが急進派を支持した場合、急進派の存在はセンターの評価を押し上げませんでした。

これは「完全減衰型の相互作用」と呼ばれるパターンです。
急進派がいるだけでは不十分で、「距離を取る」という行動が条件になっていたのです。


なぜ支持が高まったのか

研究では、その理由も分析されています。

鍵となったのは二つの心理的要因でした。

第一に、センターが「それほど急進的ではない」と知覚されること。
第二に、参加者がセンターと「自分を重ねやすくなる(同一視)」ことです。

分析によれば、

急進派の存在
→ センターがより穏健に見える
→ センターと自分を重ねやすくなる
→ センターへの支持が高まる

という連鎖が確認されました。

ただし、この連鎖はセンターが急進派と距離を取った場合にのみ成立しました。


全体の気候対策支持は下がらなかった

もう一つ重要な点があります。

この操作は、「気候対策全体」への支持を下げませんでした。

つまり、

・活動家が気候行動を求めること
・政治家が気候対策を進めること
・個人が環境に配慮した行動をとること

といった一般的な支持は、どの条件でも変わりませんでした。

穏健派が急進派と距離を取ることで自分たちの支持を高めても、気候行動そのものへの支持が損なわれるわけではなかったのです。


期待違反ではなく「対比」が働いた

研究では二つの理論が検討されました。

一つは「期待違反理論」。
もう一つは「同化・対比理論」です。

結果は後者、つまり対比の説明をより強く支持しました。

人は急進派と並ぶ穏健派を見ると、距離を取っている場合に「より穏健だ」と感じます。これは急進派との対比によって生まれる効果です。

一方、穏健派が急進派を支持すると、「同じ側」とみなされ、急進性が一部共有されるように見える可能性があります。

今回のデータでは、この対比の働きが明確に示されました。


急進化は続くのか

ここで浮かぶ問いは、「急進派が穏健派を有利にするなら、運動はどんどん過激化するのか」というものです。

研究者たちは、そのような単純な結論には慎重です。

極端さをエスカレートさせ続けることは、倫理的にも現実的にも持続不可能です。運動が長期的に社会的支持を得るためには、多様な戦術のバランスと、明確な立場表明が重要になると考えられます。


この研究が示したもの

この研究は、観察的な事例分析ではなく、実験的に因果関係を検討しました。その結果、次のことが示されました。

・急進派は必ずしも運動を損なうわけではない
・ただし、穏健派が距離を取ることが条件である
・支持は「急進性の知覚」と「同一視」によって媒介される
・気候対策全体への支持は低下しない

社会運動は一枚岩ではありません。内部に異なる戦術を持つグループが存在すること自体が、外部からの評価に影響を与えます。

重要なのは、「急進派がいるかどうか」ではなく、「穏健派がどう位置づけるか」です。

声の大きさだけではなく、その距離感が、支持のかたちを変える。
この研究は、その点を実証的に示しました。

(出典:communications psychology DOI: 10.1038/s44271-026-00412-z

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