- チェコの10代を対象に、体型情報をオンラインでよく調べるほどサプリ購入と結びつくことがわかりました。
- 理想の体型の内面化は筋肉系サプリの購入と関係が強く、減量サプリとは別の経路で動機づけが起きると示されています。
- 年齢やBMIの影響もあり、男女で購入割合の説明力が異なることや、研究には限界があると記されています。
スクロールの先にある“購入”
オンライン理想と若者のサプリ消費
チェコ共和国のマサリク大学(Masaryk University)およびブルサ・ウルダグ大学(Bursa Uludag University)に所属する研究チームは、思春期の若者がインターネット上でどのように健康や体型に関する情報と関わり、それが実際の「購入行動」にどのようにつながっているのかを検討しました。
テーマは、体重減少サプリメントと筋肉増強サプリメントのオンライン購入です。
近年、若者はSNSや動画プラットフォーム、検索サイトを通して、「理想の体型」や「手軽に変われる方法」に日常的に触れています。痩せる、引き締まる、筋肉をつける――そうしたメッセージは、広告と情報の境界が曖昧な形で流れてきます。
しかし、「見ている」ことと「買っている」ことは同じなのでしょうか。
この研究は、その間にある心理的・行動的な経路を明らかにしようとしました。
1,526人の全国代表サンプル
対象となったのは、13歳から18歳までのチェコの若者1,526人です。男女はほぼ半数ずつで、平均年齢は15.4歳でした。
調査では、以下の点が測定されました。
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オンライン上で体型やフィットネスに関する情報をどのくらい検索しているか
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オンライン上の理想的な体型(女子では「細い理想」、男子では「筋肉質な理想」)をどの程度内面化しているか
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過去1年に、体重減少サプリや筋肉増強サプリをオンラインで購入した頻度
加えて、年齢、家庭の経済状況、BMI(体格指数)、身体への満足度、インターネット利用時間なども統制されました。
まず全体像を見ると、
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体重減少サプリを購入したことがあるのは4.1%
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筋肉増強サプリを購入したことがあるのは約20%
でした。
筋肉増強関連の購入が、はるかに多いことがわかります。
情報検索は「購入」と結びついていた
もっとも一貫していた結果は、「体型やフィットネスに関する情報を頻繁に検索している若者ほど、サプリメントをオンラインで購入している」という点でした。
これは女子でも男子でも同様でした。
単にSNSを長時間使っているかどうかよりも、「何を目的に検索しているか」が重要だったのです。
研究者は、こうした若者がフィットネス関連サイトやサプリ販売ページに接触する中で、広告や推薦コンテンツに触れる機会が増え、それが購入につながっている可能性を指摘しています。
同時に、すでにサプリを使っている若者が、さらに情報を求めるという「循環的な関係」も考えられます。
つまり、
検索 → 接触 → 購入
購入 → さらなる検索
という相互強化の構造です。
インターネットは単なる情報源ではなく、「行動を支える生態系」のように機能している可能性があります。
理想の体型の内面化は「筋肉系」にだけ影響
次に重要なのは、「理想体型の内面化」です。
女子は「細い理想」、男子は「筋肉質な理想」にどの程度影響を受けているかを測定しました。
結果は興味深いものでした。
理想体型を強く内面化している若者は、「筋肉増強サプリ」の購入と有意に関連していました。
しかし、「体重減少サプリ」の購入とは関連していませんでした。
これは直感とは少し異なります。
痩せたい理想を強く持つ女子が、必ずしも減量サプリを買っているわけではないのです。
一方で、筋肉をつけたいという理想は、実際の購入行動とより直接的につながっていました。
研究者は、理想の内面化が必ずしも同じ種類の消費行動に直結するわけではないことを示唆しています。
体重減少商品と筋肉増強商品では、動機や心理的経路が異なる可能性があるのです。
年齢とBMIの影響
統制変数にもいくつか意味のある結果がありました。
女子では、BMIが高いほど体重減少サプリの購入と関連していました。
これは、体格と減量行動の関連を示す先行研究と整合的です。
また、筋肉増強サプリについては、男女ともに「年齢」が有意な予測因子でした。
年齢が高いほど購入傾向が強かったのです。
思春期後半になるにつれて、
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同世代との比較が強まる
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自律性が高まる
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経済的自由度が増す
といった要素が影響している可能性が考えられます。
どこまで説明できたのか
統計モデルが説明できた割合は、
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体重減少サプリ:女子12%、男子10%
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筋肉増強サプリ:女子21%、男子35%
でした。
特に男子の筋肉増強サプリでは、かなり大きな割合が説明されていました。
これは、オンライン情報検索と理想の内面化が、筋肉系商品において強く関連していることを示しています。
限界と今後の課題
この研究は横断研究であり、因果関係は断定できません。
また、自己申告データであるため、実際の購入や使用量との完全な一致は保証されません。
さらに、
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どのサイトを見ていたのか
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合法サプリと違法成分を含む商品を区別していない
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実際に摂取しているかどうかは測定していない
といった制限もあります。
それでも、本研究は重要な問いを投げかけています。
オンラインで「理想」に触れることが、単なる意識の問題にとどまらず、「消費行動」という具体的な行動にまで及んでいる可能性がある、ということです。
スクロールから販売へ
SNSのタイムラインを流れていく画像。
理想化された身体。
広告と情報のあいだの曖昧なメッセージ。
それらは単なる視覚刺激ではありません。
検索し、比較し、購入する。
その一連の行動は、静かに形成されています。
若者のオンライン健康行動を理解するには、「スクリーンを見る時間」ではなく、「スクリーンの中で何を探しているか」に目を向ける必要があるのかもしれません。
スクロールの先には、カートがあります。
そして、そのカートは、単なる消費ではなく、身体観や自己像と深く結びついている可能性があるのです。
(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1722369)

