- ソーシャルメディアの利用が多いほど、体への不満と乱れた食行動が増える傾向がある。
- 運動の情報を見ても、食べ方の感じ方や管理の仕方が変わり、緊張して食べ方が乱れることもある。
- 心の変化と行動の変化の両方が、同時に食行動に影響していると考えられる。
スクロールするたび、食べ方がわからなくなる
食事の時間ではないのに、なぜか食べたくなる。
誰かの体型を見るたびに、自分の体が気になってしまう。
あるいは、運動をしているはずなのに、かえって食べることが不安になる。
こうした感覚は、単なる「意志の弱さ」や「自己管理の問題」なのでしょうか。
この研究は、その背景にある構造を、ソーシャルメディアとの関係から丁寧に整理しています。
研究者たちが注目したのは、
ソーシャルメディアの利用が、どのような“道筋”を通って、乱れた食行動につながるのか
という問いでした。
「使いすぎ」ではなく、「どう影響するか」
この研究は、ソーシャルメディアを単純に「悪いもの」「使いすぎると危険なもの」として扱っていません。
焦点は、利用そのものよりも、心と行動にどのような変化が生じるのかです。
研究者たちは、次の二つの経路に注目しました。
ひとつは、ボディイメージの不満です。
理想的な体型の画像や動画を繰り返し見ることで、自分の体への評価が下がっていく可能性。
もうひとつは、フィジカルアクティビティ、つまり運動行動です。
運動に関する情報に多く触れることで、実際の運動量や運動への意識が変化し、それが食行動に影響する可能性です。
この研究の特徴は、
心の経路(ボディイメージ)と、行動の経路(運動)を同時に扱ったことにあります。
誰を対象に、どのように調べたのか
調査対象は、中国の大学生を中心とした若年成人422人でした。
平均年齢は22歳台で、調査はオンライン質問紙によって実施されています。
参加者は、日常的なソーシャルメディアの利用状況、
自分の体に対する感じ方、
運動の頻度や強度、
そして食行動の特徴について回答しました。
食行動については、次のような側面が測定されています。
-
感情によって食べてしまう傾向
-
周囲の刺激(匂い・見た目・広告など)に反応して食べてしまう傾向
-
食事量や内容を強く制限しようとする傾向
これらをまとめて、「乱れた食行動」として分析しています。
見えてきた二つの経路
分析の結果、まず確認されたのは、
ソーシャルメディアの利用が多いほど、乱れた食行動が強い傾向があるという関係でした。
しかし、研究者たちはそこで止まりませんでした。
その関係が、どのように成り立っているのかを詳しく調べています。
ボディイメージを通る経路
ソーシャルメディアの利用が多い人ほど、
自分の体に対する不満が強くなる傾向がありました。
そして、このボディイメージの不満が強いほど、
感情的な食行動や、極端な食事制限といった問題が増えることが示されました。
つまり、
「見る → 比べる → 自分を否定する → 食行動が乱れる」
という流れが、ひとつの経路として確認されたのです。
運動行動を通る経路
もうひとつの経路は、少し意外なものでした。
ソーシャルメディアの利用は、運動行動とも関連していました。
運動に関する投稿や情報に触れることで、運動量が増える人もいます。
しかし、この運動行動の変化が、必ずしも食行動を安定させるとは限りませんでした。
むしろ、運動と食事を強く結びつけて管理しようとすることで、
食べることへの緊張や制限が強まるケースも示唆されています。
二つの経路は、同時に働いている
重要なのは、
この二つの経路が、どちらか一方ではなく、同時に存在していたという点です。
ソーシャルメディアは、
-
心の中では、理想像との比較を通じて自己評価を揺さぶり
-
行動の面では、運動や自己管理への意識を変化させる
その両方を通じて、食行動に影響している可能性が示されました。
この研究が投げかけている問い
この研究は、「ソーシャルメディアをやめればいい」と結論づけてはいません。
また、「運動すれば解決する」とも言っていません。
むしろ、
私たちが何を見て、どう比べ、どのように自分の体と付き合っているのか
その全体の構造に目を向ける必要があることを示しています。
スクロールの先にあるのは、
単なる情報ではなく、
知らないうちに形づくられていく「体の感じ方」や「食べ方」なのかもしれません。
そしてそれは、
気づかないまま続けている日常の中で、静かに積み重なっていくものなのです。
(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2025.1699756)

