- 60種類のAIは作りが違っても、同じ答えにたどり着く地図が似ていた
- 点数が高いAIほど同じ考え方に近づくが、見たことのない形には弱い地図になる
- AIは世界の見え方を比べる新しい評価が必要で、理解の程度を測る道具になり得る
別々の学校で、別々の教科書で育ったのに、同じ答えにたどり着いていた
想像してください。
ある人は、日本で育ちました。
別の人は、外国で育ちました。
使っていた言葉も、教科書も、先生も違います。
それでも、大人になって同じ問題を解かせると、
考え方の道筋が驚くほど似ていたとしたら、どうでしょうか。
この研究がAIの世界で見つけたのは、まさにそれに近い現象です。
何が起こった研究なのか
この研究を行ったのは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を中心とする国際研究チームです。
研究者たちは、化学や材料、タンパク質などを学習した約60種類のAIを集めました。
ここで重要なのは、
これらのAIが同じ作りではないという点です。
-
文字列として分子を読むAI
-
原子を点として三次元で見るAI
-
タンパク質を配列として理解するAI
まるで、
-
文章で説明されて学んだ人
-
図や模型で学んだ人
-
実物を触って学んだ人
が混ざっているような状態です。
研究者たちは、同じ分子や構造をこれらのAIに見せて、
AIの頭の中で何が起きているかを比べました。
AIの「頭の中」とは何か
AIは、物をそのまま理解しているわけではありません。
分子や材料を見せると、
内部ではそれを数値の配置に変換します。
これは、人間で言えば、
-
「この問題は、こう考えればいい」
-
「この形は、こういう特徴がある」
という頭の中の地図のようなものです。
この研究は、
その地図が、AIごとにどれくらい似ているかを調べました。
何がおどろきなのか①
見方が違うはずなのに、同じ地図を描いていた
ここで最初の驚きが起きます。
分子を
-
文字で読むAI
-
立体として見るAI
この二つは、本来なら考え方が全然違っていてもおかしくありません。
ところが実際には、
頭の中の地図がかなり似ていたのです。
これは、
「文章で習った人」と
「図で習った人」が、
同じ内容についてほぼ同じ理解にたどり着いた
という状況に近いです。
つまり、
方法が違っても、重要なところは自然と同じになる
という現象が、AIの中で起きていました。
何がおどろきなのか②
成績が良いAIほど、同じ方向に集まっていった
次の驚きは、もっとはっきりしています。
材料の性質を予測するAIたちを比べると、
-
成績が普通のAIは、考え方がバラバラ
-
成績が良いAIほど、同じ考え方に近づいていく
という傾向が見えました。
これは、たとえるなら、
-
テストの点が低い人は、解き方が人それぞれ
-
点が高い人たちは、だいたい同じ発想で解いている
という状態です。
研究者たちは、
これは偶然ではなく、
現実の物理世界が持つ共通の構造に近づいている可能性を示していると考えています。
しかし、万能ではなかった
ここで研究は、良い話だけで終わりません。
AIにとって見慣れた問題では、
良いAIたちは同じ地図を描きます。
ところが、
見たことのないタイプの構造を見せると、様子が変わります。
多くのAIが、
-
どれも似たような
-
あいまいで
-
役に立ちにくい地図
を作ってしまったのです。
これは、人間で言えば、
「教科書に出てきた問題は得意だけど、
少し形を変えられると急にわからなくなる」
という状態に似ています。
この研究の本当のすごさ
この研究がすごいのは、
「AIはもう人間のように理解している」
と主張したことではありません。
むしろ逆です。
-
AIは、ある範囲では
同じ世界の見方に自然と集まる -
しかし、その外に出ると
まだ簡単に崩れる
という、現在地を正確に示した点にあります。
さらに重要なのは、
AIの良し悪しを
-
点数
-
正解率
ではなく、
「世界をどう見ているか」
という視点で比べられることを示した点です。
これは、
AIをただの答えを出す機械ではなく、
どこまで理解に近づいているのかを見る道具として扱おうとする、一歩先の研究だと言えます。
(出典:arXiv DOI: 10.48550/arXiv.2512.03750)

