- 自己効力感が高いほど、生成AIと話したい気持ちに強く影響することが分かった。
- 粘り強さも自信につながり、楽しさはある程度、不安は弱くなることが示された。
- 難しい会話をいきなりさせず、短く簡単な練習を繰り返して自信を育てるのが効果的と提案されている。
生成AIと話したいと思える人は、どんな人か
――「楽しさ」よりも「自分はできる」という感覚が効いていた
英語を学んでいる多くの人が、「読む」「書く」はある程度できるようになっても、「話す」ことになると急に難しさを感じます。
頭の中では言いたい内容が浮かんでいるのに、声に出そうとすると止まってしまう。
間違えたらどうしよう。
変に思われたらどうしよう。
こうした状態は、英語教育の分野では長く、「話す能力」そのものだけでなく、話そうとする意思の問題として捉えられてきました。
この「話そうとする意思」は、専門的にはコミュニケーション意欲と呼ばれます。
どれほど語彙や文法を知っていても、話そうと思えなければ、実際の会話は生まれません。
近年、この状況に新しい可能性をもたらしているのが、生成AIです。
生成AIは、24時間いつでも利用でき、失敗しても責められず、評価の目もありません。
では、人はどのような心理状態のときに、生成AIと「話してみよう」と思うのでしょうか。
この問いに取り組んだのが、韓国・クンミン大学 教育学大学院と、アメリカ・ノースイースタン大学などの研究者による共同研究です。
研究の狙い
人と話すときと、AIと話すときでは何が違うのか
これまでのコミュニケーション意欲に関する研究の多くは、人と人が向き合う場面を前提に行われてきました。
しかし生成AIとの会話は、
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相手が人間ではない
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評価される心配が少ない
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好きな時間に、好きなペースで練習できる
という点で、大きく異なります。
研究者たちは、
「人間相手で成り立ってきた心理モデルは、生成AI相手でも当てはまるのか」
という疑問を持ちました。
そこで次の4つの心理要因に注目しました。
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学習グリット(粘り強さ)
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話す自己効力感(自分は話せるという感覚)
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話す楽しさ
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話す不安
これらが、生成AIと話そうとする気持ちにどのように関係するのかを調べました。
調査の対象と方法
中国の複数の大学に在籍する英語を外国語として学ぶ学部生350人を対象に調査が行われました。
参加者は全員、生成AIを使って英語のスピーキング練習をした経験がありました。
多くの学生は、月に3〜5回程度、生成AIで会話練習をしていました。
質問紙を用いて、
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どのくらい粘り強く学習を続けるタイプか
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自分は英語を話せると思っているか
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生成AIと話すとき楽しいか
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不安を感じるか
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生成AIと話したいと思うか
を測定し、統計モデルを使って関係性を分析しました。
まず分かったこと
4つの心理要因はすべて関係していた
分析の結果、
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自己効力感が高いほど
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グリットが高いほど
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楽しさが大きいほど
生成AIと話したい気持ちは強くなりました。
一方で、
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不安が高いほど
生成AIと話したい気持ちは弱くなりました。
つまり、人間相手の場合と同じように、生成AI相手であっても、自信・粘り強さ・感情・不安はすべて関係していました。
もっとも影響が大きかったのは「自己効力感」
4つの要因の中で、**もっとも強く影響していたのは「話す自己効力感」**でした。
自己効力感とは、
「自分はこの課題をうまくこなせる」
という感覚のことです。
研究では、
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自分は英語を話せる
-
多少難しくても対処できる
と感じている学生ほど、生成AIと話そうとする傾向が強いことが示されました。
楽しさや不安よりも、まず「自分はできる」という感覚が土台になることが分かりました。
グリットは「間接的」にも効いていた
学習グリット(粘り強さ)は、直接的に生成AIと話したい気持ちを高めるだけでなく、自己効力感を高める働きもしていました。
粘り強い学生ほど、
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練習を続ける
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小さな成功体験を積む
-
その結果、自信が育つ
という流れが生まれます。
そして高まった自己効力感が、
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楽しさを増やし
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不安を減らし
最終的に生成AIと話したい気持ちにつながっていました。
楽しさと不安の影響は「あるが控えめ」
楽しいと感じるほど話したくなり、不安が強いほど話したくなくなる、という関係は確認されました。
ただし、その影響の大きさは、自己効力感やグリットよりも小さいものでした。
研究者たちは、
生成AIとの会話は「評価されない」「恥をかきにくい」ため、
人間相手ほど感情の影響が強くならない可能性があると考えています。
この研究が示す大きなポイント
この研究が示しているのは、次のような構図です。
粘り強さ → 自信 →(楽しさ・不安)→ 生成AIと話したい気持ち
つまり、
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楽しくさせること
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不安を減らすこと
も大切ですが、それ以上に、
「自分は話せる」という感覚を育てること
が中心的なカギになります。
教育や学習への示唆
研究者たちは、次のような方向性を示しています。
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いきなり難しい会話をさせない
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短くて簡単な会話から始める
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少しずつ成功体験を積ませる
こうした設計によって自己効力感を高めることが重要です。
また、長期的な目標を意識させることで、グリットを育てることも、生成AI活用の効果を高めると考えられます。
おわりに
生成AIは、単なる便利なツールではなく、
「自分は話せるかもしれない」と思える経験を積む場として機能している可能性があります。
この研究は、
生成AI時代の語学学習において、
最も重要なのは「楽しさ」よりもまず、
小さな自信をどう育てるかであることを静かに示しています。
「話せないから練習できない」のではなく、
「話せると思えないから練習しない」。
その循環を、生成AIが変えられるかもしれません。
(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1754495)

