なぜ人はペットを「家族」と感じるのか

この記事の読みどころ
  • 人とペットの関係は、動物への態度・擬人化・家庭での役割という三つの要素が組み合わさって形づくられる可能性がある。
  • ペットを子どもや家族のように感じる人は、よく話しかけたり触れ合ったり仲直りをしたりして、関係が深くなる傾向がある。
  • ペットを人間のように感じるほど心の支えを感じやすく、犬の飼い主のほうがその傾向が強いことがある。

犬や猫と暮らしている人は、よくこう言います。

「この子は家族みたいな存在です」
「まるで子どもみたいです」
「この子は親友です」

もちろん、犬や猫は人間ではありません。
それでも多くの人は、ペットを単なる動物ではなく、人に近い存在として感じています。

なぜ人はペットをそう感じるのでしょうか。
そして、その感じ方は人と動物の関係にどのような影響を与えているのでしょうか。

この問いを調べた研究が、ルーマニアで行われました。研究は、ルーマニア農業科学・獣医学大学クルジュ=ナポカ校の研究チームによって実施されています。

研究者たちは、人とペットの関係を形作る心理的な仕組みを詳しく調べました。その結果、人とペットの関係を理解するうえで重要な三つの要素が見えてきました。

それは

・動物に対する態度
・動物を人間のように感じる傾向
・ペットが家庭の中で持つ役割

です。

これらが組み合わさることで、人とペットの関係は形作られている可能性が示されました。


動物を「人間のように感じる」心

人間には、動物や物に人間のような心を見出す傾向があります。

心理学ではこれを
擬人化(Anthropomorphism)
と呼びます。

たとえば

「犬が嫉妬している」
「猫がすねている」
「この子は私の気持ちを理解している」

と感じることがあります。

こうした考え方は、必ずしも正確とは限りません。
動物の行動を人間の感情や価値観で解釈してしまう可能性もあります。

しかし同時に、このような考え方は人と動物の関係を深める役割も持っていると考えられています。

動物に感情や考えがあると感じる人ほど、動物の福祉や権利を重視する傾向があることが、これまでの研究でも示されています。

つまり、動物を人間に近い存在として感じることは、人と動物の関係を支える心理的な橋のような役割を果たしている可能性があります。


ペットは家庭の中でどんな存在なのか

人がペットをどう感じるかは、家庭の中での「役割」にも関係しています。

ペットは

・子どものような存在
・友人のような存在
・家族の一員
・ただの動物

など、さまざまな形で理解されます。

このような役割の感じ方は単なるイメージではありません。
実際の行動にも影響します。

ペットを家族の一員だと感じている人は、

・よく話しかける
・触れ合う
・抱きしめる

といった行動をより多く行う傾向があります。

また、ペットに対して何か悪いことをしてしまったと感じたときに

・謝る
・ごほうびをあげる
・特別にかわいがる

といった「仲直り」の行動をとることもあります。

つまり、ペットにどんな役割を与えているかが、人とペットの関係の形を決めている可能性があるのです。


445人のペット飼い主を調査

研究では、ルーマニアに住む犬または猫の飼い主を対象に調査が行われました。

対象となったのは 445人 の飼い主です。

そのうち

・犬の飼い主 279人
・猫の飼い主 166人

でした。

参加者はオンライン質問票に回答し、

・動物への考え方
・ペットをどれくらい人間に近い存在として感じるか
・ペットを家庭の中でどんな存在だと思っているか
・ペットとのコミュニケーション
・ペットから感じる心の支え

などが調べられました。


ペットを人間のように感じるほど関係は深くなる

分析の結果、重要なパターンが見えてきました。

それは、

ペットを人間に近い存在として感じるほど、ペットの役割を重要なものとして認識する

という関係です。

そして、ペットの役割を重要だと感じている人ほど

・ペットとよくコミュニケーションを取る
・ペットに対して仲直り行動を行う
・ペットから心の支えを感じる

傾向が強くなっていました。

つまり、

動物への態度

擬人化

ペットの役割認識

実際の関係

という形で、人とペットの関係が形作られている可能性が示されたのです。


ペットから「心の支え」を感じる理由

研究では、ペットが社会的な支えとして感じられる理由にも注目しています。

多くの人は、ペットに対して

・愛情
・安心感
・受け入れてもらえる感覚

を感じています。

ペットは、人間のように言葉で助言をするわけではありません。
しかし、そばにいる存在として心理的な支えになることがあります。

研究者たちは、ペットを人間のように感じる心理が、こうした支えを感じる体験と関係している可能性を指摘しています。


擬人化には「方向」がある

研究ではもう一つ興味深い点が調べられました。

それは、擬人化の感情の方向です。

人がペットを人間のように感じるとき、その感情は必ずしも同じではありません。

たとえば

・「かわいい子」
・「私の赤ちゃん」

といった愛情のこもった言葉もあれば、

・「困ったやつ」
・「いたずらっ子」

といった否定的な言葉もあります。

研究では、このような感情の違いも分析されました。

その結果、ペットに対して愛情的な擬人化をする人ほど、ペットとの関係がより強くなる傾向が見られました。

つまり、擬人化そのものだけでなく、どんな感情で擬人化しているかも関係に影響している可能性があるのです。


犬と猫で違いはあるのか

犬と猫の飼い主の違いも分析されました。

その結果、犬の飼い主のほうが

・ペットを人間に近い存在として感じる傾向
・ペットから社会的支えを感じる傾向

がやや強いことが見られました。

ただし、ペットを家族として感じる程度や、コミュニケーションの頻度などには大きな違いは見られませんでした。

つまり、犬と猫の違いよりも、人がペットをどう感じているかのほうが重要である可能性が示されています。


人と動物の関係はどのように作られるのか

この研究は、人とペットの関係を

「単なる愛情」ではなく
「心理的な仕組み」

として理解する視点を示しています。

動物への態度
人間らしさの感じ方
家庭での役割の認識

これらが組み合わさることで、人と動物の関係は形作られます。

そしてその関係は、

会話
触れ合い
仲直り
心の支え

といった日常の行動や感情の中に現れます。


人とペットの関係を理解するために

人は動物を人間のように感じることがあります。

それは単なる思い込みではなく、
人と動物の関係を作る一つの方法なのかもしれません。

ペットを子どものように感じる人もいれば、
友人のように感じる人もいます。

その感じ方は人によって違います。

しかし、その感じ方が

・ペットとの行動
・感情の結びつき
・心の支え

といった体験を形作っている可能性があります。

人と動物の関係は、ただの飼育ではありません。

そこには、人が意味を与え、役割を感じ、関係を作り上げていく心理的なプロセスが存在しているのかもしれません。

(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1771900

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