- 機能的な内容と快楽的な内容、そして「信頼できそうか」で反応が変わることが分かった。
- 快楽的な投稿は感情の動かしやすさは高いが、理解を深める効果は機能的な投稿ほど大きくない場合がある。
- AIが作成と明かすと、理解の共感は保たれる一方、快楽的な投稿では感情的共感が弱まることがある。
生成AIの広告は、内容によって“効き方”が変わる
最近、広告やSNSの文章を見ていて、「これはAIが作ったのかもしれない」と感じることが増えてきました。
言葉づかいが整いすぎている。説明が過不足なく、無駄がない。少しだけ、人の気配が薄い。
では、その正体が「AIによる生成」だと明かされたとき、私たちの感じ方はどう変わるのでしょうか。
信頼できそうになるのか、それとも一歩引いてしまうのか。
この問いに対して、中国のハルビン商業大学の研究チームは、生成AIによるマーケティング投稿が、人の心にどう作用するのかを、かなり細かく調べました。
ポイントは、「広告の中身の種類」と、「共感(エンパシー)」、そして「AIが作ったと明かすこと」です。
研究が注目したのは「関わり方」の違い
この研究では、SNS上の広告に対する反応を、単なる「好意」や「購入意欲」ではなく、次の三つに分けて捉えています。
ひとつは、内容を理解し、考え、納得しようとする関わり方。
もうひとつは、楽しい、好き、気分が動くといった感情的な関わり方。
そして三つ目が、いいねやコメント、シェアといった行動としての関わり方です。
私たちは普段、これらをひとまとめにして「反応」と呼びがちですが、研究ではあえて分解することで、どこに違いが生まれるのかを見ようとしました。
広告には「役に立つ型」と「楽しい型」がある
研究の中心となる考え方は、広告の価値を二つに分けることです。
ひとつは、機能的価値。
成分、性能、手順、根拠など、「役に立つ」「判断材料になる」情報です。
もうひとつは、快楽的価値。
楽しさ、雰囲気、物語性、ワクワク感といった、「気分を動かす」要素です。
同じ商品でも、「どれくらい効果があるか」を語る投稿と、「使うとこんな気分になれる」と語る投稿では、受け取り方が違うはずです。
研究は、その違いが、AI生成かどうかによってどう変わるのかを調べました。
実験はSNS上の広告を想定して行われた
実験は二段階で行われています。
舞台は、中国のSNS上にある架空の化粧品ブランドの投稿です。実在のブランドだと、もともとの印象が影響してしまうため、あえて架空にしたと説明されています。
最初の実験では、
・機能的な内容か、快楽的な内容か
・信頼できそうな表現か、そうでないか
この組み合わせによって、受け手の反応がどう変わるかを調べました。
次の実験では、そこにもうひとつの要素を加えます。
それが、「この投稿はAIを使って作成されています」と明かすことです。
楽しい投稿は、考えさせるよりも動かしやすい
最初の実験で明らかになったのは、快楽的な内容の投稿は、感情や行動を動かしやすい、という点でした。
楽しい、雰囲気がいい、世界観が好き。
そうした投稿は、「いいねしたい」「シェアしたい」といった反応を引き出しやすかったのです。
一方で、内容を深く考えたり、理解を深めたりする方向では、機能的な投稿との差はそれほど大きくありませんでした。
楽しさは心を動かしますが、必ずしも思考を深めるわけではない、という構図が見えてきます。
信頼できそうかどうかは、すべてに影響する
もうひとつ、はっきりしていたのは、投稿の信頼性です。
表現が具体的で、一貫していて、説得力がある。
そう感じられる投稿は、認知的な関与、感情的な関与、行動としての関与、そのすべてを押し上げていました。
AIが作ったかどうか以前に、「信頼できそうかどうか」は、やはり大きな土台として働いていることがわかります。
「AIが作った」と明かすと、共感の形が変わる
では、「この投稿はAIが作成しました」と明かした場合、何が起こるのでしょうか。
研究が注目したのは、共感の種類です。
ここでいう共感は、大きく二つに分けられます。
ひとつは、内容を理解し、納得するタイプの共感。
もうひとつは、気持ちを共有したり、感情的につながったりする共感です。
結果として、AIが作ったと明かされた場合、機能的な投稿では、理解や納得を通じた共感が比較的保たれました。
一方、快楽的な投稿では、感情的な共感が弱まりやすくなりました。
「楽しさ」や「人らしさ」を期待していたところに、AIという存在が前面に出ると、どこか距離が生まれてしまう。
そのような反応が示唆されています。
AIは万能でも、中立でもない
この研究が示しているのは、「AIだから良い」「AIだから悪い」という単純な話ではありません。
役に立つ情報を、わかりやすく、安定して届ける。
その点では、AIはむしろ相性がいい場合があります。
一方で、感情に訴えかけたり、人とのつながりを感じさせたりする場面では、AIであることを意識した瞬間に、受け手の心が一歩引いてしまうこともある。
私たちは、内容だけでなく、「誰が語っているのか」「どんな存在が背後にいるのか」を、思っている以上に敏感に感じ取っているのかもしれません。
なぜ違和感は生まれるのか、という問い
AIによる生成は、これからも当たり前になっていきます。
だからこそ重要なのは、「隠すか、明かすか」ではなく、「どんな価値を届けようとしているのか」です。
この研究は、私たちが感じる小さな違和感や安心感が、偶然ではなく、一定の構造を持っていることを示しています。
そして同時に、「共感とは何か」「信頼とは何か」を、あらためて考えさせます。
AIが書いた文章を読んでいるとき、私たちは本当は、何に反応しているのでしょうか。
その問いは、まだ完全には閉じられていません。
(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2025.1701085)

