- 宿題に対する子どもの気持ちは、親と教師の関わり方が重なり方によって影響されることがわかった。
- 親と教師の関与には五つのパターンがあり、両方が高い場合「楽しい」「誇らしい」気持ちが強くなることが多い。
- 親だけ多くて教師の関与が少ないと否定的な感情が出やすく、関わり方のバランスが大切だとされている。
親と教師の関わりは、子どもの「宿題の気持ち」をどう形づくるのか
学校で出される宿題は、教室の外で行われる学習活動です。そのため、授業中の学習とは異なり、教師だけでなく、家庭環境や親の関わり方といった多くの要因の影響を受けます。子どもが宿題に取り組むとき、どのような気持ちで向き合うのか。その背景には、親と教師の関与のあり方が深く関係している可能性があります。
この研究は、トルコの中学生を対象に、親と教師の宿題への関わり方の組み合わせが、子どもの学業感情にどのように結びついているのかを明らかにしようとしたものです。特に、「楽しい」「誇らしい」といった前向きな感情と、「怒り」「退屈」といった否定的な感情が、どのような関与のパターンのもとで生じやすいのかに焦点が当てられています。
宿題に関わる「感情」は、学習の重要な一部です
この研究の理論的な土台となっているのは、コントロール=バリュー理論と呼ばれる枠組みです。この理論では、学習中に生じる感情は、「自分はうまくやれそうだ」という感覚(コントロール感)と、「その課題に意味があると感じられるか」(価値づけ)によって形づくられると考えられています。
宿題に対して「できそうだ」「意味がある」と感じられると、楽しさや誇りといった前向きな感情が生まれやすくなります。反対に、「どうせできない」「なぜやるのかわからない」と感じると、不安や怒り、退屈といった感情が強くなりやすくなります。親や教師の関わり方は、こうした感覚を間接的に左右する環境要因として位置づけられています。
親と教師の関わり方は、一つではありません
研究では、親と教師の関与をそれぞれ複数の側面から捉えています。
教師については、宿題の内容が授業とつながっているか、フィードバックが役立つものか、どれくらい頻繁に返されるか、そして子どもの自主性を尊重しているかといった点が測定されました。
一方、親の関与については、問題の内容を一緒に考えるような支援、子どもに任せる姿勢、そして管理や干渉の度合いといった側面が区別されています。親の関与は「多い・少ない」だけではなく、「どのような形か」が重要だと考えられているためです。
五つの「関与パターン」が見えてきました
約1000人の中学生の回答を分析した結果、親と教師の関与の組み合わせとして、五つのタイプが見いだされました。
一つ目は、教師の関与が弱く、親の関与に偏っているタイプです。宿題について親は関わっているものの、教師からの支援やフィードバックが十分でない状態です。
二つ目は、親と教師の関与が全体的に平均的で、バランスが取れているタイプです。極端に多くも少なくもなく、調和のとれた関わり方が特徴です。
三つ目は、親と教師の関与がともに高いものの、親の管理や干渉が強いタイプです。支援は手厚い一方で、親のコントロールが強く感じられている状態です。
四つ目は、親も教師もほとんど関与していないタイプです。宿題が、ほぼ子ども一人に任されている状況といえます。
五つ目は、親と教師の関与がともに高く、親の管理も過度ではないタイプです。支援と自主性のバランスが取れている状態とされています。
前向きな感情は、関与が「重なった」ときに強まります
これらのタイプと宿題に対する感情を比べたところ、はっきりとした傾向が見られました。
親と教師の両方から高い関与を感じているタイプでは、「楽しい」「誇らしい」といった前向きな感情が最も強く報告されていました。親の管理がやや強いタイプと、適度な管理にとどまるタイプのあいだで、感情の違いはほとんど見られませんでした。
一方で、教師の関与が弱いタイプや、親も教師も関与していないタイプでは、楽しさや誇りが低く、「怒り」や「退屈」が相対的に強くなっていました。特に、教師の関与が乏しい状態で親だけが関与している場合、否定的な感情が目立つ傾向がありました。
興味深いことに、「不安」については、どのタイプでも大きな違いは見られませんでした。不安は、関与の量よりも、別の要因に左右されやすい感情である可能性が示唆されています。
親の関与だけでは、十分でない場合があります
この研究が示している重要な点の一つは、教師の関与が感じられない状況では、親の関与が必ずしも良い感情につながらないということです。親が「助けよう」として関わっていても、学校側とのつながりが感じられないと、子どもは宿題に意味を見いだしにくくなり、結果として否定的な感情を強めてしまうことがあります。
平均的でも、親と教師の関与が調和しているタイプのほうが、親だけが前面に出ているタイプよりも、感情面では良好な状態が示されていました。これは、宿題が「家庭だけのもの」でも「学校だけのもの」でもなく、そのあいだにある活動であることを示唆しています。
年齢は影響しますが、性別の違いは見られませんでした
分析の結果、年齢が上がるにつれて、高い関与を感じるタイプに属する可能性は低くなる傾向がありました。成長とともに、親や教師の関与が弱まっていくことが反映されていると考えられます。
一方で、性別による違いはほとんど見られませんでした。親や教師の関与のパターンは、男女で大きく異なるものではなかったという結果です。
宿題は「関係性」の中で経験されています
この研究は、宿題を単なる学習課題としてではなく、親・教師・子どもという関係性の中で経験される活動として捉え直す視点を提供しています。子どもが宿題に対してどんな気持ちを抱くのかは、誰がどれくらい関わるかだけでなく、その関わりがどのようにつながっているかによって大きく左右されます。
親と教師がそれぞれ別々に頑張るのではなく、子どもにとって意味のある形で関与が重なっていくこと。その重なりが、宿題を「つらいもの」から「取り組めるもの」へと変えていく可能性を、この研究は静かに示しています。
感情は、学習の結果ではなく、学習の一部です。宿題をめぐる感情に目を向けることは、子どもの学びを理解するための、大切な手がかりなのかもしれません。
(出典:BMC Psychology DOI: 10.1186/s40359-026-03985-w)

