- 情熱的な恋の経験回数の平均は約2回で、最も多いのは人生で2回という結果だった。
- 一度も経験しない人も約14%、年齢が上がるほど回数は少し増えるが差は小さい。性別の差は小さく、異性愛者の男性がやや多い程度で、他の性的指向では差がない。
- 情熱的な恋は誰にでも起こり得るが、頻繁には起こらず、恋愛には別の形のつながりもあるということが示された。
人は一生に何回、激しい恋をするのか
「人生で、心が強く揺さぶられる恋を、あなたは何回経験するのだろうか」
多くの人が一度は考えたことのあるこの問いに、統計的に答えようとした研究があります。
この研究を行ったのは、アメリカ・インディアナ大学キンゼイ研究所を中心とする研究チームです。
研究者たちは、「情熱的な恋(パッショネイト・ラブ)」が、人の一生の中でどれくらいの回数経験されるものなのかを、1万人を超える大規模データを用いて検討しました。
その結果は、私たちが漠然と抱いている「恋愛のイメージ」と、必ずしも一致するものではありませんでした。
情熱的な恋とは何か
この研究で扱われている「情熱的な恋」とは、単に好意をもつことや安心感のある関係を指すものではありません。
心理学者スターンバーグが提唱した「愛の三角理論」では、愛は次の三つの要素から成り立つとされています。
・情熱
・親密さ
・コミットメント(関係を続けようとする意志)
このうち「情熱」とは、相手を強く求める気持ち、理想化、身体的・感情的な高揚などを伴う、非常に強い状態を指します。
多くの場合、恋愛の初期に現れやすく、時間とともに変化しやすい、不安定で一時的な性質をもっています。
研究者たちは、この「情熱的な恋」が人生の中で何度現れるのかに注目しました。
1万人以上の「独身者」を対象にした理由
この研究の特徴のひとつは、「現在パートナーのいない独身の成人」だけを対象にしている点です。
対象となったのは、18歳から99歳までのアメリカ在住の独身者10,036人でした。
独身者に限定した理由について、研究者たちは次のように説明しています。
・現在の関係に影響されず、過去の恋愛を振り返りやすい
・人生のさまざまな段階の恋愛経験を比較できる
・独身者は社会的に多いにもかかわらず、研究では軽視されがちだった
このような理由から、「人生全体を通じた恋愛経験」を捉えるのに適したサンプルだと考えられました。
人生で経験する情熱的な恋は「平均2回」
まず、最も基本的な結果です。
参加者が報告した、情熱的な恋の経験回数の平均は 2.05回 でした。
内訳を見ると、次のような分布になっていました。
・一度も経験したことがない:14.2%
・1回:27.8%
・2回:30.3%
・3回:16.8%
・4回以上:10.9%
つまり、**最も多いのは「人生で2回」**という回答でした。
そして、注目すべきなのは、**約7人に1人が「一度も情熱的な恋を経験したことがない」**と答えている点です。
情熱的な恋は、多くの人が人生で一度は経験するものではあるものの、決して頻繁に起こる出来事ではないことが示されました。
年齢が上がると恋の回数は増えるのか
次に、年齢との関係が分析されました。
結果として、年齢が高い人ほど、情熱的な恋の経験回数がわずかに多い傾向が見られました。
ただし、その関連は非常に小さなものでした。
年齢が10歳上がったからといって、恋の回数が大きく増えるわけではありません。
研究者たちは、この結果を次のように解釈しています。
・年齢とともに「恋をしやすくなる」というより
・生きてきた時間が長い分、経験の機会が少しずつ積み重なった可能性が高い
つまり、情熱的な恋は、若い時期に集中しやすく、その後はゆっくりと増えていくものだと考えられます。
性別による違いはあるのか
性別についても分析が行われました。
全体として見ると、男性のほうが女性よりも、わずかに多く情熱的な恋を経験しているという結果でした。
ただし、この差も非常に小さく、「統計的には差があるが、日常感覚では大きな違いとは言えない」程度のものでした。
さらに詳しく見ると、この性別差はすべての人に当てはまるわけではありませんでした。
性的指向と性別が交差するところ
研究者たちは、性的指向(異性愛、同性愛、両性愛など)も含めて分析を行いました。
その結果、次のことが明らかになりました。
・異性愛者全体と、性的マイノリティ全体のあいだに、大きな差はない
・ただし「異性愛の男性」は「異性愛の女性」よりも、情熱的な恋の回数がやや多い
・同性愛者や両性愛者では、男女差は見られない
つまり、性別の違いが表れたのは、「異性愛者」という条件が重なった場合だけでした。
この点について研究者たちは、社会的な恋愛規範や、感情表現の文化的期待が影響している可能性を指摘しています。
情熱的な恋は「誰にでも起こるが、何度も起こるものではない」
これらの結果をまとめると、次のような姿が浮かび上がります。
・情熱的な恋は、人生の中で多くの人が一度は経験する
・しかし、その回数は多くても数回程度
・まったく経験しない人も、決して珍しくない
・年齢、性別、性的指向による違いはあるが、どれも小さい
この研究は、「情熱的な恋」を人生の中心的な出来事として理想化しすぎる文化的イメージに、静かな修正を加えています。
恋をしていない人生は「遅れている」のか
研究者たちは、この結果が持つ実践的な意味にも触れています。
情熱的な恋を経験していない人は、しばしば「自分は何か欠けているのではないか」「人生が遅れているのではないか」と感じがちです。
しかし、この研究が示しているのは、情熱的な恋を経験しない人生も、決して例外ではないという事実です。
また、情熱的な恋が少ないからといって、親密さや支え合い、穏やかな愛情が欠けているとは限りません。
恋愛には、情熱だけでなく、さまざまな形があることを、このデータは示しています。
情熱の少なさは異常ではない
研究者たちは最後に、次のようなメッセージを残しています。
情熱的な恋は、人の人生にとって特別な体験ではありますが、それが頻繁に起こらないからといって、人生が貧しいわけではありません。
むしろ、多くの人にとって情熱は「まれに訪れるもの」であり、それ以外の時間は、別の形のつながりや愛情が人生を支えています。
この研究は、「恋をしているかどうか」「何回恋をしたか」という単純な尺度では測れない、人の関係性の多様さを、静かに浮かび上がらせています。
情熱的な恋をしていない時間にも、意味がある。
そのことを、数字を通して教えてくれる研究だと言えるでしょう。
(出典:INTERPERSONA DOI: 10.54899/ijpr.v20i1.733)

