感情は、色の明るさでも語られる

この記事の読みどころ
  • ロボットの顔の色の明るさを変えると、感情の伝わり方が変わることを実験で確かめた。
  • 喜びは明るいほど伝わりやすく、恐れや悲しみは暗いと強く感じられ、怒りと中立は中くらいの暗さで強く感じられる。
  • 動きのある表情でも明るさの影響があり、分かりやすい感情は伝わりやすく、繊細な感情は感じ方に差が出やすい。

色の明るさは、ロボットの感情をどこまで伝えているのか

人は、相手の感情を読み取るとき、言葉だけでなく、表情や雰囲気といった視覚的な手がかりに強く頼っています。
それは人と人のあいだだけでなく、ロボットとのやりとりにおいても同じです。

今回紹介する研究は、中国の**南京郵電大学(Nanjing University of Posts and Telecommunications)常州大学(Changzhou University)に所属する研究者によって行われました。
社会ロボットの「顔」に表示される色の
明るさ(ライトネス)**が、感情の伝わり方にどのような影響を与えるのかを、実験的に検証しています。

この研究が注目したのは、色相や彩度ではなく、「どれくらい明るい色か、暗い色か」という一点でした。


ロボットの表情は、色の「明るさ」でも作られている

現在、多くの社会ロボットは、人間の顔をそのまま再現するのではなく、ディスプレイ上に表示された絵文字のような顔で感情を表現しています。
目や口の形に加えて、LEDによる色の変化が、感情を伝える重要な手段になっています。

これまでの研究では、

  • 赤は怒り

  • 青は落ち着き

といったように、色相や彩度の違いが感情と結びつけられてきました。
しかし多くの場合、色相・彩度・明るさが同時に変えられており、「明るさだけ」が感情にどう影響するのかは、ほとんど検証されていませんでした。

この研究は、色相と彩度を固定したまま、明るさだけを段階的に変えるという方法をとっています。


実験1:同じ表情、違う明るさ

最初の実験では、大学生47名が参加しました。
画面には、怒り・喜び・悲しみ・恐れ・中立という5種類の感情を表すロボットの顔が表示されます。

それぞれの感情について、

  • 明るさ100%から

  • 明るさ1%まで

11段階に分けた表情が提示され、参加者は「どれくらい感情が強く感じられるか」を5段階で評価しました。

ここで重要なのは、顔の形は同じで、色の明るさだけが変わっているという点です。


感情ごとに、明るさの効き方は違っていた

分析の結果、すべての感情において、色の明るさは感情の強さの評価に影響していました。
ただし、その影響の仕方は、感情の種類によって大きく異なっていました。

喜びは、明るいほど強く伝わる

「喜び」の感情は、最も明るい色のときに強く感じられ、暗くなるにつれて急激に弱まっていきました。
この関係は非常に明確で、色の明るさだけで喜びの強さがかなり説明できることが示されています。

つまり、喜びは明るさそのものが重要な手がかりになっている感情だといえます。


恐れや悲しみは、暗さが強さを引き出す

一方で、「恐れ」や「悲しみ」は逆の傾向を示しました。
色が暗くなるにつれて、感情の強さが高く評価されるようになったのです。

特に恐れは、かなり暗い色のときにピークを迎えていました。
悲しみについては、中程度の暗さと、非常に暗い状態の両方で強さが高まるという、少し複雑なパターンが見られました。


怒りと中立は「ほどほどの暗さ」で強くなる

「怒り」と「中立」の表情は、極端に明るくても暗くてもなく、中程度の暗さのときに最も強く感じられていました。

これは、暗ければ暗いほど強くなる、という単純な関係ではないことを示しています。


実験2:動きの中でも、明るさは意味をもつ

2つ目の実験では、明るさが時間とともに変化する動的な表情が使われました。
ここでは、実験1で明らかになった「感情が最も強くなる明るさ」に合わせて、色の変化のタイミングを調整しています。

結果として、

  • 怒りや喜びのような分かりやすい感情は、動きの中でも安定して伝わる

  • 悲しみや恐れのような繊細な感情は、人による感じ方の差が大きくなる

という傾向が確認されました。

明るさの変化の「速さ」や「長さ」も、感情の伝わり方に関わっている可能性が示唆されています。


この研究が示していること

この研究が伝えている重要なポイントは、次の点です。

  • 色の明るさだけでも、感情の強さは大きく変わる

  • ただし、その効果は感情の種類によって異なる

  • 喜びは明るさが高いほど伝わりやすい

  • 恐れや悲しみは、暗さによって強調されやすい

  • ロボットの感情表現は、「一律の色設計」ではうまくいかない

ロボットの顔に表示される色は、単なる装飾ではなく、感情を構成する重要な要素のひとつだということが、実験的に示されたと言えます。


感情は「形」だけでなく「雰囲気」で伝わる

人が感情を感じ取るとき、私たちは細かい理屈を考えているわけではありません。
「なんとなく明るい」「なんとなく重い」といった、全体の印象から受け取っています。

この研究は、その「なんとなく」の正体の一部が、色の明るさにあることを丁寧に示しています。

ロボットが人と関わる場面が増えていく中で、
感情をどう見せるか、どう伝えるかは、ますます重要な問いになっていくのかもしれません。

感情は、顔の形だけではなく、
その顔が放つ「明るさ」や「暗さ」によっても、静かに語られているのです。

(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1677997

テキストのコピーはできません。