インターネットは、子どもの心と人間関係をどう変えていくのか?

この記事の読みどころ
  • 中国の農村部の中学生を1年間追跡し、インターネットの使い方は三つの状態に分かれ、固定されたタイプではないことがわかった。
  • 高い依存だった生徒の多くは1年後に低い依存やほとんど依存なしへ移動する一方、元から依存が少なかった人が深くなることもあった。
  • 依存が強まると抑うつ・不安が増え、親や友人・先生との関係がうまくいかないと感じる人が増える。依存が下がると抑うつは減るが、対人関係がすぐ良くなるとは限らない。

インターネットは、農村の思春期にどんな影響を与えているのか

中国の農村部では、近年、通信インフラの整備が進み、インターネットは特別なものではなく、日常の一部になりつつあります。学習や情報収集、友人とのやりとりにおいて、オンラインの世界は欠かせない存在になりました。

こうした変化のなかで、北京師範大学(Beijing Normal University)の研究グループは、中国の農村地域に住む中学生を対象に、インターネットの使い方が時間とともにどのように変化し、その変化が心の状態や人との関係にどのように結びついているのかを、1年間にわたって追跡しました。

この研究は、単に「インターネット依存があるかどうか」を見るのではなく、その状態がどのように移り変わり、その過程で何が起きているのかに焦点を当てています。

「インターネット依存」は一つの姿ではなかった

研究では、782人の中学生のデータをもとに分析が行われました。その結果、インターネットの使い方は、大きく三つの状態に分けられることが示されました。

一つ目は、インターネット依存がほとんど見られない状態です。日常生活への影響は小さく、使いすぎの兆候も弱いグループです。

二つ目は、低いレベルのインターネット依存が見られる状態です。大きな問題ではないものの、生活や学業への影響が部分的に現れ始めています。

三つ目は、高いレベルのインターネット依存が見られる状態です。使う時間を自分で調整しにくく、インターネットが生活の中心になりつつあるグループです。

重要なのは、これらが固定された「タイプ」ではなかったという点です。

インターネット依存は、時間とともに動いていた

1年後に行われた再調査では、多くの生徒が別の状態へと移行していました。

とくに目立ったのは、依存の程度が高かった生徒の多くが、より軽い状態へと移っていたことです。高い依存状態にあった生徒の約3分の2は、1年後には低い依存、あるいはほとんど依存が見られない状態になっていました。

この結果は、インターネット依存が必ずしも一方向に悪化し続けるものではないことを示しています。

一方で、もともと問題が少なかった生徒の一部が、より深い依存状態へ移行していたことも確認されました。インターネットとの関係は、改善も悪化も起こりうる、変化し続ける状態だったのです。

依存が強まると、心と人間関係に何が起こるのか

研究者たちは次に、こうした変化が生徒たちの心理状態や対人関係とどのように結びついているのかを詳しく調べました。

その結果、インターネット依存が強まった生徒ほど、抑うつや不安が強くなる傾向が見られました。気分の落ち込みや心配の強さが増しやすくなっていたのです。

また、親との関係、友人との関係、教師との関係についても、「うまくいっていない」と感じる割合が高くなっていました。インターネットの使い方の変化が、感情面だけでなく、人とのつながりの感じ方にも影響していたことが示されています。

とくに、依存が軽い状態から重い状態へ移行した生徒では、これらの問題がはっきりと増えていました。

逆に、依存が弱まると何が変わるのか

では、インターネット依存の程度が下がった場合はどうだったのでしょうか。

高い依存状態から軽い状態へ移行した生徒では、抑うつ症状が明確に軽減していました。気分の重さが和らぎ、心理的な負担が小さくなっていたのです。

一方で、不安や人間関係については、必ずしも同じように改善していたわけではありませんでした。インターネット使用が減っただけでは、対人関係がすぐに良くなるとは限らないことも、この研究は示しています。

人との関係は、時間をかけて築かれるものであり、オンライン行動の変化だけでは十分でない場合がある、という現実が浮かび上がります。

「原因」よりも「連鎖」に目を向ける視点

この研究では、抑うつや不安、人間関係の問題が、インターネット依存の変化を強く予測するという明確な証拠は得られませんでした。

一方で、インターネット依存の変化が、その後の心の状態や人間関係と結びついていることは、比較的はっきりと示されました。

つまり、「心が不安定だからインターネットに依存する」という単純な説明ではなく、インターネットの使い方が感情や人との関係に影響し、それがさらに生活全体に波及していく――そうした連鎖の一部が、静かに描き出されています。

早く気づくこと、柔軟に支えること

この研究が伝えているのは、インターネット依存を一律に危険視する必要も、軽く見てよいわけでもない、ということです。

依存の状態は変わりうること、そしてその変化が心や人とのつながりと深く結びついていること。だからこそ、早い段階で変化に気づき、状況に応じた支え方を考えることが重要だと示しています。

農村地域では、家庭や学校、地域社会が果たす役割はとくに大きく、インターネットだけを切り離して考えることはできません。子どもがどんな気持ちでオンラインの世界に向かっているのか。その背景に、どんな不安や孤立があるのか。

この研究は、答えを急がず、そうした問いを丁寧に考えるための手がかりを、静かに差し出しています。

(出典:BMC Psychology DOI: 10.1186/s40359-026-03992-x

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