内気さが問題なのではない

この記事の読みどころ
  • 内気さが高いと安心感が下がり、抑うつになりやすいという経路が示されています。
  • 内気さは適応力も低くし、適応が難しくなると抑うつにつながるとされます。
  • 安心感と適応は連動しており、内気さを和らげる環境づくりが心の負担を減らす可能性があります。

内気さは、どのように抑うつへとつながっていくのか――安心感と適応という静かな経路

人と話すとき、声が出にくい。 教室や会議室で、自分の意見を言う前に「変に思われないだろうか」と考えてしまう。

このような経験をもつ人は少なくありません。こうした傾向は一般に「内気さ」と呼ばれます。内気さは、長いあいだ「控えめな性格」「恥ずかしがり屋」といった、性格の一側面として捉えられてきました。

しかし近年、心理学の研究では、内気さが心の健康と深く関係する可能性が示されています。

中国の山東師範大学心理学部、山東女子大学マルクス主義学院、済南市順華学校による共同研究は、大学生を対象に、内気さと抑うつの関係、そしてその間に存在する心理的な仕組みを詳しく調べました。本研究が注目したのは、「安心感」と「適応」という二つの要因です。

この研究は、内気さがあるからといって、直接的に抑うつになるのではなく、いくつかの段階を経て影響が広がっていく可能性を示しています。


大学生の抑うつは、身近な問題

研究によると、中国の大学生における抑うつの割合は約3割に達しており、年々増加していると報告されています。

抑うつは、気分の落ち込みだけでなく、 ・意欲の低下 ・集中力の低下 ・睡眠や食欲の変化 ・将来への悲観的な見通し といった形で現れます。

大学生は、思春期から成人期へと移行する時期にあり、学業、友人関係、進路選択など、多くの課題に直面します。そのため、心理的な負担が大きくなりやすい集団でもあります。


内気さは抑うつを予測する

本研究ではまず、内気さと抑うつの関係が調べられました。

その結果、内気さの程度が高い学生ほど、抑うつの程度も高い傾向があることが確認されました。

内気な人は、対人場面で緊張や不安を感じやすく、自分を否定的に評価しがちです。

「うまく話せない自分はダメだ」 「きっと失敗する」

こうした考えが積み重なることで、否定的な感情が蓄積し、抑うつにつながりやすくなると考えられます。


安心感とは何か

本研究で扱われている「安心感」とは、

・自分は危険にさらされていないと感じられるか ・困ったときに対処できると思えるか

といった、心理的な安全の感覚を指します。

安心感が高い人は、失敗や困難に直面しても、

「なんとかなる」 「助けを求めればいい」

と考えやすく、ストレスの影響を受けにくいとされています。


内気さは安心感を低下させる

研究では、内気さが高い学生ほど、安心感が低い傾向にあることが示されました。

内気な学生は、これから起こる出来事に対して、

「うまくできないかもしれない」 「否定されるかもしれない」

といった予測をしやすくなります。

このような予測が続くと、常に身構えた状態になり、心が休まりにくくなります。


安心感の低さは抑うつにつながる

研究結果は、安心感が低いほど、抑うつの程度が高いことも示しています。

内気さ → 安心感の低下 → 抑うつ

という経路が確認されました。


適応とは何か

本研究でいう「適応」とは、大学生活の中で環境とうまく折り合いをつける力を指します。


内気さは適応を難しくする

研究では、内気さが高い学生ほど、適応の程度が低い傾向にあることが示されました。


適応の難しさは抑うつにつながる

内気さ → 適応の低下 → 抑うつ

という経路も確認されました。


安心感と適応は連動している

内気さ → 安心感の低下 → 適応の低下 → 抑うつ

という連鎖的な経路も確認されました。


おわりに

内気さは、その人の一部です。

それ自体が悪いものではありません。

安心できる環境と、少しずつ適応できる経験の積み重ねが、心の負担を軽くしていく可能性があります。

(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1690111

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