- アルゴリズムのおすすめは便利だが、自分に合っていないと感じると自由を奪われた気分になり、回避行動につながることがある。
- その反発は心理的リアクタンスと呼ばれ、アルゴリズムを信用せず自分で探す・提案を無視する行動に現れる。
- 研究は、便利さと自由は別物で、自由をどう感じるかがデザインの鍵になると示している。
ショート動画のアプリを開くと、こちらが何かを探す前に、すでに「あなた向け」と書かれた動画が流れてきます。
自分で選んでいるつもりなのに、気づけば選ばされている。そんな感覚になることがあります。
それでも私たちは、アルゴリズムによるおすすめを日常的に使っています。
当たれば便利です。時間をかけずに、自分の好みに近いものに出会えるからです。
ところが、そのおすすめが外れたとき。
「なんか違う」
「これ、私向けじゃない」
そう感じた瞬間、妙な苛立ちや疲れが生まれることがあります。
この研究は、そうした日常的な違和感が、どのような心理の流れを通って「アルゴリズムを避ける行動」につながっていくのかを、実証的に調べたものです。
うまくいっていないと「感じる」ことが出発点
研究がまず注目したのは、アルゴリズムが本当に正確かどうかではありません。
重要なのは、「自分がどう感じているか」です。
おすすめが
・役に立たない
・自分に合っていない
・説得力がない
と感じるほど、人は「この仕組みはうまく機能していない」と認識します。
ここでポイントなのは、客観的な精度よりも、主観的な手応えが行動を左右するという点です。
次に起こるのは「自由を邪魔された感覚」
アルゴリズムがうまくいっていないと感じると、多くの人はただ静かに距離を取るわけではありません。
代わりに起こりやすいのが、
「勝手に決められたくない」
「押しつけられている気がする」
という反発の感情です。
心理学では、こうした状態を**心理的リアクタンス(psychological reactance)**と呼びます。
自由を制限されたと感じたときに生まれる反発です。
おすすめが続くだけで、誰かに命令されたわけでもないのに、
「なんとなく嫌だ」
という感覚が生じるのは、このリアクタンスが関係していると考えられます。
反発が「回避行動」を生む
この反発は、最終的に行動へとつながります。
・おすすめを信用しない
・検索して自分で探す
・アルゴリズムの提案を無視する
こうした行動が、研究では**アルゴリズム回避(algorithm aversion)**と呼ばれています。
つまり、
うまくいっていないと感じる
→ 自由を奪われた感覚が生まれる
→ アルゴリズムを避ける
という流れです。
ここで人による「違い」が現れる
研究では、同じ体験をしても、反発の強さに差が出ることが示されました。
その違いを生むのが、人は変わる存在だと考えるかどうかという信念です。
人は大きく分けて、次の2つの見方を持つとされます。
・人は基本的にあまり変わらない
・人は努力や状況で変わる
このうち、「人は変わる」と考える人のほうが、アルゴリズムが外れたときに、より強い反発を示しやすいことがわかりました。
一見すると意外です。
柔軟な考え方の人のほうが、流せそうにも見えるからです。
しかし研究では、次のように考えられています。
・変化を信じる人ほど、プロセスや結果に敏感
・だからこそ、期待外れに対する落差が大きい
・結果として反発が強くなる
柔軟さは、必ずしも「気にしない力」とは同じではない、ということです。
どんな調査が行われたのか
この研究は、中国の大学と、カナダの大学に所属する研究者たちによって行われました。
短尺動画アプリの利用者を対象に、大規模なアンケート調査を実施し、
「おすすめが役に立たないと感じる度合い」
「反発の強さ」
「回避行動」
「人は変わると考えるかどうか」
などを測定しました。
そのデータを統計的に分析し、心理の流れを検証しています。
この研究が示している大きな視点
この研究が伝えているのは、
アルゴリズム回避は、
「AIが嫌いだから」
「テクノロジーが怖いから」
だけで起きているのではない、ということです。
むしろ、
自分の感覚とズレた
→ 自由を侵されたように感じた
→ だから距離を取る
という、人として自然な心理の連鎖として起きています。
「便利さ」と「自由」は別物
おすすめ機能は、便利です。
しかし便利さが増えるほど、選んでいる感覚は弱くなります。
この研究は、
人は「正確な提案」だけでは満足しない
という事実を静かに示しています。
人が求めているのは、
・当たること
だけでなく、
・自分で選んでいると感じられること
でもあります。
アルゴリズムとの付き合い方は、
性能の問題だけではなく、
「自由をどう感じられるか」という設計の問題でもある。
この研究は、そのことを私たちに考えさせてくれます。
(出典:humanities and social sciences communications DOI: 10.1057/s41599-026-06573-w)

