- ギフテッドの子どもは発散的思考の成績が非ギフテッドの同年代より高い傾向があり、平均的には中程度からやや大きい差が見られる。
- しかし研究ごとに差の大きさにはばらつきがあり、ギフテッドだからといって必ず創造的とは限らない。
- 創造性は環境や評価のされ方、課題との相性など条件と深く結びつくもので、固定的な性質ではない。
「ギフテッドの子どもは創造性が高い」。
教育や才能について語られる場面では、こうした言い方がごく自然に使われます。
新しい発想が次々に浮かぶ、型にとらわれない考え方ができる、独創的なアイデアを生み出す――そうしたイメージは、多くの人に共有されているでしょう。
しかし、この「創造的である」という評価は、どの程度、研究的に裏づけられているのでしょうか。
そして、その差は本当に一貫したものなのでしょうか。
今回紹介する研究は、この素朴ですが重要な問いに対して、発散的思考という心理学的指標を用い、メタ分析という方法で検討しています。
この研究は、アラビアンガルフ大学、ノーステキサス大学、サザンオレゴン大学、アアルト大学、バーレーン教育省、ユタバレー大学に所属する研究者たちによって行われました。
複数の国・機関にまたがるチームによる、大規模な統合分析です。
創造性をどう測るのか――鍵となる「発散的思考」
研究で中心となる概念は「発散的思考(ダイバージェント・シンキング)」です。
発散的思考とは、一つの正解に収束する思考ではなく、
一つの問いから、どれだけ多く、どれだけ多様なアイデアを生み出せるかを見る考え方です。
たとえば、
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レンガの使い道をできるだけ多く挙げる
-
紙コップを別の目的で使うとしたら何が考えられるか
といった課題が、典型的な発散的思考テストとして知られています。
評価のポイントには、
アイデアの数、柔軟性、独自性などが含まれます。
この研究では、「創造性」を漠然とした印象ではなく、
測定可能な認知的能力として扱っている点が重要です。
メタ分析というアプローチ
この研究の特徴は、単一の実験や調査結果に頼らず、
過去に行われた多数の研究を統合して分析している点にあります。
研究チームは、ギフテッドの児童・生徒と、非ギフテッドの児童・生徒を比較し、
発散的思考テストの成績を報告している研究を幅広く収集しました。
そのうえで、
それぞれの研究結果を統計的にまとめ、
「全体としてどの程度の差があるのか」を検討しています。
個々の研究では見えにくい全体像を捉えるための、非常に慎重な方法です。
平均的には、たしかに差はあった
分析の結果、ギフテッドの児童・生徒は、
非ギフテッドの同年代の子どもたちと比べて、
発散的思考の成績が高い傾向を示しました。
その差の大きさは、効果量で見ると「中程度からやや大きい」と評価される水準です。
単なる偶然とは言えない、統計的に意味のある差でした。
この結果だけを見ると、
「やはりギフテッドは創造的なのだ」と結論づけたくなるかもしれません。
しかし、研究者たちは、ここで立ち止まります。
見逃してはいけない「ばらつき」の大きさ
このメタ分析で、研究者たちが特に注目したのは、
研究間のばらつきの大きさでした。
つまり、
-
ある研究では、ギフテッドと非ギフテッドの差が非常に大きい
-
別の研究では、その差がほとんど見られない
というように、結果が一様ではなかったのです。
このばらつきは、「ギフテッド」というカテゴリーが、
決して単純で均質な集団ではないことを示唆しています。
ギフテッドであること=創造的、ではない
研究者たちは、次の点を強調しています。
ギフテッドの子どもが、常に、すべての状況で、より創造的である
と考えるのは正確ではありません。
発散的思考の高さは、
-
どのような基準でギフテッドと定義されているか
-
どの年齢層を対象としているか
-
どのような発散的思考テストを使っているか
といった条件によって、大きく左右されていました。
つまり、「ギフテッドかどうか」だけで、
創造性の高さを一律に判断することはできないのです。
創造性は「ラベル」ではなく「関係性」の中にある
この研究が示しているのは、
創造性が、生まれつき決まった固定的な属性ではない、という視点です。
ギフテッドと呼ばれる子どもたちは、
平均的には発散的思考が高い傾向を示します。
しかし、その力がどのように表れるかは、
-
学習環境
-
評価のされ方
-
課題との相性
といった要因と深く結びついています。
創造性は、個人の中に単独で存在するものではなく、
環境との相互作用の中で立ち上がる力だと考えるほうが、
この研究結果にはよく合っています。
「創造的であるべき」という期待の落とし穴
「ギフテッドなのだから、創造的でなければならない」
という期待は、ときに子ども自身を縛ります。
このメタ分析は、
そうした単純なラベル付けに、静かに疑問を投げかけています。
ギフテッドの中にも、
発散的思考が高い子もいれば、そうでない子もいる。
逆に、非ギフテッドとされる子どもの中にも、
非常に豊かな発想力をもつ子がいます。
創造性は、選別の道具ではなく、
育ち方を考えるための視点として扱われるべきなのかもしれません。
おわりに
この研究は、「ギフテッドは創造的か」という問いに対して、
単純な肯定でも否定でもない答えを示しています。
平均的な傾向は存在する。
しかし、その背後には大きな多様性がある。
創造性を一つの数値やラベルに回収せず、
その揺らぎや条件に目を向けること――
それこそが、このメタ分析が私たちに教えてくれている姿勢なのではないでしょうか。
(出典:High Ability Studies)

