つながっているのに、なぜ孤独なのか

この記事の読みどころ
  • 若い大人は孤独を感じやすい一方で、つながりや仲間感も豊かだという二重の状態になりやすい。
  • 孤独とつながりは別物で、関係が多くても孤独を感じることがある。
  • 変化が多い時期は日常の安定が崩れやすく、つながりと孤独が同時に存在する状態になりやすい。

つながっているのに、孤独を感じる――若い大人の不思議な社会感覚

「友だちはいるのに、なぜか孤独を感じる」。
この感覚は、気のせいでも、個人の弱さでもないかもしれません。アメリカで行われた大規模調査は、**若い大人(エマージング・アダルト)**が、強いつながりと孤独を同時に経験しやすいという、いささか逆説的な実態を明らかにしました。

この研究を行ったのは、カンザス大学 コミュニケーション学部コロラド州立大学 コミュニケーション学部ミシガン州立大学 コミュニケーション学部の研究チームです。18歳から95歳までのアメリカ人4,812人を対象に、社会的な「良い状態」と「つらい状態」を同時に測定し、年齢による違いと、その組み合わせを丁寧に分析しました。


孤独とつながりは、同じ線の両端ではない

この研究の出発点は、とても重要な問いです。
**孤独(社会的なつらさ)つながり(社会的な充足)**は、単に正反対のものなのでしょうか。

研究チームは、孤独や疎外感といった**社会的イリビーイング(social ill-being)と、つながり、仲間感、支援、友人の数といった社会的ウェルビーイング(social well-being)**を、別々に測定しました。
その結果、両者は確かに関連はあるものの、片方が高いからといって、もう片方が必ず低いとは限らないことが示されました。

つまり、人は
「つながっているのに、孤独を感じる」
「孤独は少ないが、関係は充実していない」
といった状態にもなりうる、ということです。


年齢で見ると、何が起きているのか

年齢との関係を詳しく見ると、興味深い傾向が現れました。

まず、孤独感や社会的な断絶感は、年齢が上がるにつれて直線的に低下していきます。若い大人ほど、孤独や断絶を感じやすい一方で、高齢になるほどそれは少なくなっていきました。

一方で、つながりの感覚、仲間と過ごす感覚、友人の数は、少し違う動きを見せます。
これらは、若い大人と高齢者で高く、中年期でいったん下がるという、ゆるやかな曲線を描いていました。

つまり、若い大人は

  • 孤独を感じやすい

  • しかし同時に、つながりや仲間感も豊か

という、二重の状態に置かれやすいのです。


「社会的にあいまいな状態」という多数派

研究チームは次に、孤独とつながりの組み合わせから、人々を4つのタイプに分類しました。

その結果、最も多かったのは、
社会的ウェルビーイングが高く、イリビーイングも中程度にある人たちでした。
全体の約6割が、このグループに含まれます。

この人たちは、

  • 仲間感や支援、友人関係は豊か

  • しかし、孤独や断絶をまったく感じないわけではない

という、**「社会的にあいまいな状態」**にあります。

そして、このタイプに特に多かったのが、
若く、教育水準が高く、この1年で多くの人生の変化を経験した人たちでした。


変化が多い人生は、なぜ孤独を呼ぶのか

研究では、過去1年の人生の変化も詳しく調べられました。
進学、就職、引っ越し、恋愛関係の開始や終了、結婚、出産、卒業――。
一般には「前向きな出来事」とされるものが多く含まれています。

これらの変化を多く経験した人ほど、

  • 友人は多く

  • つながりも感じている

一方で、

  • 孤独や不安定さも感じやすい

という傾向がありました。

研究チームは、この背景を説明するために、**存在論的安全(ontological security)**という考え方を用いています。
これは、日常の繰り返しや安定した役割によって、「世界は予測でき、自分の居場所は確かだ」と感じられる感覚のことです。

若い大人の時期は、まさにこの日常の型が次々と壊れ、組み替えられる時期です。
友だちができても、環境が変われば離れるかもしれない。仕事や住む場所が変われば、関係のリズムも変わる。
そのため、人はいるのに、生活としての安定した関係が持ちにくい状態になりやすいのです。


孤独の質は、同じではない

この研究は、孤独を一枚岩として扱っていません。
分析の結果、最も孤独が強い人たちは、

  • 教育水準が低く

  • ストレスが非常に高く

  • 友人関係の維持が難しく

  • 新しい友人を作ることにも困難を感じている

という、質的に異なる状況に置かれていることが示されました。

若い大人に多い「あいまいな孤独」は、
関係が豊かながらも、定着しきらないことから生じる孤独であり、
社会的に深刻な孤立とは、異なる様相を持っています。


結論を閉じないために

この研究が示しているのは、
「若い大人は孤独だ」という単純な物語ではありません。

むしろ、

  • つながりは豊か

  • 変化も多い

  • だからこそ、不安定さと孤独が同居する

という、現代的な社会経験の姿です。

選択肢が増え、人生の道筋が多様化した社会では、安定は後ろにずれ込みます。
その過程で感じる孤独は、失敗の証ではなく、変化に適応し続けている証拠でもあるのかもしれません。

孤独とつながりは、打ち消し合うものではありません。
同じ時間の中で、同じ人の中に、同時に存在しうる。
この研究は、その事実を、数字と理論の両面から静かに示しています。

(出典:PLOS One DOI: 10.1371/journal.pone.0334787

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