- 人は恋人の有無よりも、対人関係をつくる内面の徳(五つの徳のバランス)が関係の質に関わる可能性があるとされている研究だ。
- 「徳の組み合わせ」は三つのタイプに分かれ、全体がバランス型、節度と超越が弱い型、知識の徳が弱い型がある。
- 恋愛では親密さ・情熱・コミットメントの三要素でタイプ分けされ、友情は会う回数より心の距離の近さが徳のバランスと関係する、という結果だった。
恋人がいるかどうかより、どんな性格の組み合わせで生きているか
人はよく、「恋人がいるか」「結婚しているか」といった状態で、人生の充実度や人間関係の成熟度を語りがちです。
しかし、この研究は、そうした外から見える状態よりも、もっと内側にあるもの――性格的な徳(トク)=キャラクター・バーチューの組み合わせが、人との関係の質に深く関わっている可能性を示しています。
この研究を行ったのは、
マケドニア大学 教育・社会政策学部と
アリストテレス大学テッサロニキ 心理学部です。
18〜29歳の若者505人を対象に、「友情」と「恋愛」を同時に扱いながら、人の内面の構造に注目した分析が行われました。
この研究が見ている「性格の徳」とは何か
ここで扱われている「徳」とは、単なる性格の好き嫌いではありません。
人として大切だと広く共有されている価値ある性質のことです。
研究では、ポジティブ心理学で広く使われている枠組みをもとに、次の5つの徳が扱われました。
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対人の徳(Interpersonal)
思いやり、公平さ、協調性、愛情など、人と関わる力 -
知性の徳(Intellect)
柔軟な考え方、創造性、視点を切り替える力 -
知識の徳(Knowledge)
学ぶことへの関心、理解しようとする姿勢 -
節度の徳(Restraint)
自制心、誠実さ、粘り強さ -
超越の徳(Transcendence)
希望、感謝、意味づけ、人生への前向きさ
重要なのは、この研究が
「徳が高い・低い」という単純な比較をしていない点です。
各人の中で、どの徳が相対的に強く、どれが弱めかという
「内側のバランス」を見ています。
人は三つの「徳の組み合わせ」に分かれていた
分析の結果、参加者は大きく三つのタイプに分かれました。
1つ目は、全体がバランスよく整っているタイプ
どの徳も突出せず、極端に低くもない。
人との関係でも、考え方でも、感情面でも、偏りが少ない人たちです。
2つ目は、節度と超越が相対的に弱いタイプ
考える力や対人スキルはある一方で、
自分を抑えたり、意味や希望を見出したりする徳がやや弱めな構成です。
3つ目は、知識の徳が相対的に弱いタイプ
対人面や感情面は整っているものの、
「学び続ける」「理解を深める」といった姿勢が控えめな構成です。
ここで大切なのは、
どのタイプにも「良い・悪い」はないという点です。
あくまで「その人の中で、どの徳が前に出やすいか」という違いです。
恋人がいるかどうかで、徳のタイプは変わらなかった
まず注目すべき結果があります。
恋人がいる人と、いない人で、徳のタイプに違いはなかったのです。
つまり、
-
恋愛経験があるから人格が成熟している
-
恋人がいないから徳が偏っている
といった単純な図式は、データ上は支持されませんでした。
徳は、恋愛という「状態」によって左右されるものではなく、
もっと安定した、その人の内側の構造として存在していることが示されています。
友情では「会う回数」より「近さ」が分かれた
次に、友情との関係です。
ここで興味深いのは、
どれくらい頻繁に友だちと会っているかでは、徳のタイプに差が出なかった点です。
一方で、
**「どれくらい心の距離が近いと感じているか」**には差が出ました。
特に、
バランスの取れた徳のタイプの人たちは、
友人との「近さ」を強く感じていました。
これは、
友情の質は「数」や「頻度」ではなく、
内面の整い方がつくる安心感や信頼感に左右されることを示しています。
恋愛では、徳の違いが「愛の形」に現れた
恋愛については、さらに繊細な違いが見えてきました。
研究では、恋愛を次の三つの要素で捉えています。
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親密さ(Intimacy):心の近さ
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情熱(Passion):ときめきや身体的な惹かれ
-
コミットメント(Commitment):関係を続けようとする意志
そして恋愛のあり方も、三つのタイプに分かれました。
情熱が相対的に低いタイプ
このタイプには、
知識の徳が相対的に高い人が多く含まれていました。
考えること、理解すること、意味を探ることを大切にする人ほど、
恋愛でも「燃え上がる感じ」より、
落ち着いた関係性を築きやすい可能性が示されています。
全体が安定しているタイプ
情熱・親密さ・コミットメントが、
比較的バランスよく保たれている人たちです。
このタイプは、特定の徳に強く偏っているわけではなく、
状況に応じて複数の徳を使い分けているように見えます。
コミットメントが相対的に低いタイプ
このタイプには、
知識の徳が相対的に低い人が多く含まれていました。
長期的に考える、意味づけをする、
関係を「理解しながら続ける」姿勢が弱いと、
将来への約束が重く感じられることがあるのかもしれません。
この研究が静かに伝えていること
この研究は、
「どの恋愛が正しいか」
「どの性格が優れているか」
を決めるものではありません。
むしろ、次のような問いを私たちに投げかけています。
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人との関係は、状態ではなく内面の構造で形づくられているのではないか
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恋愛や友情の悩みは、相手ではなく自分の徳のバランスにヒントがあるのではないか
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「うまくいかない関係」は、欠陥ではなく組み合わせの問題なのではないか
理由研究所が大切にしている
「わからなくても、理由はある」という視点に、
この研究は静かに重なっています。
人との距離感や、愛し方に違和感を覚えたとき、
それは失敗ではなく、
自分がどんな徳を前に出して生きているのかを知る入口なのかもしれません。

