- 日本の地域活動は全体的に参加頻度も動機も低く、大規模な活動は進みにくい現状が分かりました。
- 家の周りの活動は比較的参加しやすく、やりたい気持ちと実際の参加にはギャップが生じやすいです。
- 小さな日常的な関わりから始めるのが有効で、年齢が高いほど近所との関わりが増える傾向があり、負担を抑えた設計が求められます。
地域活動は、どれくらい行われているのか
──参加頻度と「やりたい気持ち」の静かなズレ
地域活動という言葉を聞くと、町内会の集まりやお祭り、防災訓練などを思い浮かべる人が多いかもしれません。
けれど実際のところ、人びとはどのくらい地域活動に参加していて、どの程度「やりたい」と感じているのでしょうか。
成城大学、東京大学大学院、東洋大学大学院の研究チームは、日本各地の成人を対象に、26種類の地域活動について、参加頻度と参加したい気持ち(動機)を同時に調べる調査を行いました。
その結果は、地域活動の現状を、かなり率直に映し出しています。
日本の地域活動は「全体的に低い」状態
調査では、オンラインで387人の成人が回答しました。
対象となった活動は、大きく次の三つに分けられています。
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地域全体で行う活動
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家の周りで行う活動
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近所の人とのやり取りに関する活動
26種類すべてについて、「どれくらい行っているか」「どれくらいやりたいか」を6段階で尋ねています。
結果として、ほとんどすべての活動で、参加頻度も動機も尺度の中央よりかなり低いことが示されました。
つまり、多くの地域活動は、あまり行われておらず、強く望まれてもいないという現状が浮かび上がります。
例外的に比較的高かったのは、
**「道ですれ違ったときに近所の人にあいさつする」**という行動でした。
この行動だけは、参加頻度が高く、むしろ「やりたい気持ち」よりも実際の頻度のほうが高いという特徴を示していました。
「やりたい気持ち」は、参加頻度より少し高い
26活動のうち24活動では、
参加頻度よりも「やりたい気持ち」のほうが高いという結果になりました。
これは、「やりたいとは思うが、実際にはできていない」というズレを示しています。
ただし重要なのは、
その「やりたい気持ち」自体も決して高いわけではない、という点です。
研究者たちは、多くの人が
「できれば関わりたくない」
「負担に感じている」
という感覚を抱いている可能性を指摘しています。
地域活動の多くがボランティアベースで成り立っている日本では、
責任感や義務感が重く感じられやすいことも影響していると考えられます。
地域活動は、ひとつのまとまりではなかった
研究チームは、26種類の活動を、
「参加頻度」と「動機」の組み合わせからクラスター(まとまり)分析しました。
その結果、活動は大きく4つのグループに分かれました。
① 参加も動機も中程度
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近所の人にあいさつする
② やや低めだが比較的行われている
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家の周りのリサイクル
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家の周りの美化活動
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道で会った近所の人と立ち話
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緊急時に助け合う近所関係
③ 低い
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家の周りの防災・防犯・環境管理
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近所で物を貸し借りする、食べ物を分け合う
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地域全体のリサイクル・美化活動 など
④ とても低い
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町内会・自治会活動
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NPOや市民団体の活動
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地域の防災訓練
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交通安全活動
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環境保全活動
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近所の家を行き来する など
この分類から、地域全体で行う活動の多くが「とても低い」グループに入ることがわかりました。
まずは「家の周り」「近所」からが現実的
興味深いのは、
家の周りでできることや近所の人との小さな関わりのほうが、
地域全体の活動よりも、参加頻度も動機も相対的に高かった点です。
研究者たちは、地域を活性化させようとするなら、
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いきなり大規模な活動を増やす
のではなく -
まずは家の周りでできる行動
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近所同士のちょっとした関係づくり
から支援するほうが効果的かもしれない、と述べています。
小さな関わりが、将来的により広い活動への入口になる可能性があるからです。
防災に関する活動も低調
防災関連の活動は、特に重要でありながら、
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地域全体の防災活動
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家の周りの防災対策
いずれも、参加頻度・動機ともに低いグループに分類されました。
ただし、家の周りで行う防災対策のほうが、地域全体の防災活動よりはやや高い傾向がありました。
この結果は、
「まずは個人や家庭レベルでできる防災行動を促すことが、地域全体の備えにつながるかもしれない」
という示唆を与えています。
高齢になるほど、近所との関わりは増える
追加分析では、
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年齢が高いほど
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近所との活動や関係の参加頻度・動機が高い
傾向が示されました。
若い世代ほど、近所付き合いが少なく、関心も低い可能性があることが示唆されます。
「参加者を増やす」だけが答えではない
研究者たちは、
地域活動は「多ければ多いほどよい」「参加者が多いほどよい」と単純には言えない、と指摘します。
デジタル技術の活用などによって、
少人数でも機能する仕組みがつくれる場合もあります。
重要なのは、
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どの程度の関わりが必要なのか
-
その水準を誰がどう決めるのか
を、現実的に考えることです。
人びとの低い動機を前提とした、
柔軟で負担の少ない設計が求められているといえます。
地域参加は「一枚岩」ではない
この研究が示しているのは、
地域参加は単一の性質ではなく、
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小さくて日常的な関わり
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負担の大きい組織的活動
が混在する多層的な現象だということです。
地域を支える力は、
必ずしも大きなイベントだけから生まれるのではなく、
あいさつや立ち話のような、ごく小さな行動の積み重ねから育つのかもしれません。
そのような静かな可能性を、この研究は示しています。
(出典:Frontiers in Social Psychology DOI: 10.3389/frsps.2025.1717974)

