能力ではなく、面接のかたちが決めている

この記事の読みどころ
  • ビデオ面接は対面より相手がそこにいる感じが薄く、評価が低くなることがある。
  • 応募者と面接官の双方の体験を比べた結果、存在感が弱いと感じると評価が下がる傾向があった。
  • 非言語のやり取りを重視する人ほど影響を受けやすく、面接の形式が公平さに影響するかもしれないと示唆されている。

面接は「評価の場」である前に、体験の場でもある

オンライン面接が当たり前になりつつある今、「対面か、オンラインか」という選択は、単なる利便性の問題ではなくなってきています。
この研究が問いかけているのは、面接の形式そのものが、人の感じ方や評価のされ方に、どのような影響を与えているのか、という点です。

この研究は、中国の大学に所属する研究者たちによって行われ、学術誌 BMC Psychology に掲載されました。
研究を行ったのは、北京師範大学(Beijing Normal University)の心理学部に関わる研究チームです。

なぜビデオ面接は「不公平」に感じられやすいのか

これまでの先行研究では、ビデオ面接では、応募者が「不公平に扱われた」と感じやすく、面接官の評価も低くなりやすいことが繰り返し報告されてきました。
しかし、その理由は十分に説明されていませんでした。

この研究が注目したのが、「社会的存在感(ソーシャル・プレゼンス)」です。
これは、「相手がそこに“いる”とどれだけ感じられるか」「相手との関係がどれだけ実感できるか」を表す概念です。

社会的存在感という、見えにくい感覚

研究者たちは、対面面接とビデオ面接の最大の違いは、この社会的存在感にあると考えました。

ビデオ面接では、視線が合いにくい、身振りや姿勢が見えにくい、反応のタイミングがずれるといった制約があります。
こうした要素は、応募者にとっても面接官にとっても、「相手がそこにいる」という感覚を弱めてしまいます。

その結果、応募者は「うまく伝えられなかった」「本来の自分を見てもらえなかった」と感じやすくなり、面接全体を不公平だと捉えやすくなる可能性があります。

応募者と面接官、両方の体験を同時に見る

この研究の特徴は、応募者だけでなく、面接官側の体験にも注目した点にあります。
面接は一方通行ではなく、二者の相互作用だからです。

実験では、232人の参加者が応募者役と面接官役に分かれ、対面面接とビデオ面接を体験しました。
その結果、ビデオ面接では、応募者だけでなく面接官側も、応募者の非言語的な存在感を弱く感じていることが示されました。

そして、その「存在感の弱さ」が、評価を低くする方向に働いていました。

「身振りや表情」を重視する人ほど影響を受けやすい

研究ではさらに、すべての応募者が同じように影響を受けるわけではないことも示されました。

応募者の中でも、「視線」「表情」「身振り」といった非言語的なやりとりを重視している人ほど、
ビデオ面接では社会的存在感を感じにくく、不公平感も強くなっていました。

一方で、もともと非言語的なやりとりへの期待が低い応募者では、
対面とビデオの間に大きな違いは見られませんでした。

面接官側では、別の要因が支配的だった

面接官については、「考え方の抽象度(コンストラクト水準)」によって、
ビデオ面接との相性が変わるのではないか、という仮説も検討されました。

しかし、結果としては、面接官の認知スタイルによる違いは確認されませんでした。
研究者たちは、構造化された評価基準や責任の重さといった、面接特有の状況が、
個人差の影響を小さくしている可能性を指摘しています。

面接の形式は、中立ではない

この研究が静かに示しているのは、
面接の形式は「ただの手段」ではなく、人の感じ方や判断の前提条件を変えてしまう、という事実です。

ビデオ面接は効率的で、多くの利点を持っています。
しかし同時に、社会的存在感を弱めやすいという特性も持っています。

誰にとって、どの形式が合っているのか。
その問いを立てずに「同じ条件」だとみなすこと自体が、
すでに公平さから少しずれているのかもしれません。

この研究は、面接を「評価の技術」ではなく、「人と人の関係が立ち上がる場」として見直す視点を、そっと差し出しているように見えます。

(出典:BMC Psychology DOI: 10.1186/s40359-026-04017-3

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