- 20日間の調査で、孤独と拒絶感が互いに影響し合う動きが細かい時間単位で見つかった。
- 孤独は一度出ると次にも続きやすい「慣性」があり、拒絶感より持続性が強い性質を持つ。
- 孤独の揺れが大きい人ほど拒絶感が不安定になり、孤独が高まると交流や自己開示が減る傾向があった。
孤独は「気分」ではなく、日常の中で動き続けるプロセスです
人はときどき、理由がはっきりしないまま「なんとなく距離を感じる」「拒まれている気がする」と感じることがあります。その感覚は一過性のもののようでいて、気づかないうちに同じ状態へ引き戻されていることもあります。
今回紹介する研究は、アメリカのコーネル大学を中心とした心理学・医学系研究機関の共同研究チームによって行われました。この研究は、「孤独」が固定された性格特性ではなく、日常生活の中で揺れ動き、認知や行動と相互に影響し合う動的なプロセスであることを、きわめて細かい時間解像度で検証しています。
研究の焦点は、孤独と「社会的な脅威の知覚」、つまり拒絶された・否定されたと感じる認知が、日常生活の中でどのように連鎖していくのかという点です。
20日間、1日5回の「いま」を記録する
この研究では、46〜74歳の成人157人を対象に、**20日間にわたるエコロジカル・モーメンタリー・アセスメント(EMA)**が実施されました。参加者はスマートフォンを使い、1日5回、その時点までの体験について短い質問に答えます。
記録された主な内容は次の4点です。
・その時点までに感じた孤独感
・直近の対人場面で、拒絶や批判を感じたか
・誰かと交流したかどうか
・その交流で、どれくらい自己開示をしたか
重要なのは、これらが「思い出してまとめて答える」のではなく、日常の流れの中でリアルタイムに近い形で記録されている点です。これにより、孤独が「あとから振り返って評価される状態」ではなく、「その瞬間ごとに変化する状態」として捉えられます。
孤独と「拒絶の感覚」は、互いに引き寄せ合う
分析の結果、最も明確に示されたのは、孤独と拒絶感が双方向に結びついているという点でした。
孤独を感じると、その後の対人場面で「拒まれた」「否定された」と感じやすくなります。そして逆に、拒絶を感じた直後には、孤独感が高まりやすくなります。この関係は一方向ではなく、短い時間スケールで行き来する循環構造として確認されました。
さらに興味深いのは、この関係が「強さ」だけでなく、「起こりやすさ」レベルでも成り立っていたことです。つまり、
・孤独があるかないか
・拒絶を感じたか感じていないか
という0か1かのレベルでも、互いに影響し合っていました。孤独が「少し強くなる」だけでなく、「存在し始める」こと自体が、拒絶の知覚と結びついていたのです。
孤独には「抜けにくさ」がある
もう一つ重要な結果は、孤独の持続性です。
分析では、孤独感は「一度出現すると、次の時点でも続きやすい」傾向が強く、拒絶感よりも時間的な慣性が大きいことが示されました。これは、孤独が単なる瞬間的感情ではなく、状態として留まりやすい性質をもっていることを意味します。
一方で、孤独や拒絶の「強さ」は比較的変動しやすく、存在するかどうかは安定しやすいが、程度は揺れやすいという構造も明らかになりました。
孤独の揺れが大きい人ほど、社会を不安定に読む
この研究では、孤独の「平均値」だけでなく、どれくらい揺れるかにも注目しています。
日内で孤独感の変動が大きい人ほど、拒絶の感じ方も不安定になりやすいことが示されました。つまり、
・孤独が日によって、時間によって大きく上下する
→
・他者の反応を、一定した基準で捉えにくくなる
という対応関係が見られたのです。
これは、社会的な出来事そのものが変わっているというより、解釈の安定性が揺らいでいる可能性を示しています。
孤独は、人との関わりを減らしてしまう
孤独が高まった直後、人はどう行動するのでしょうか。
分析の結果、一時的に孤独が高まったあとほど、次の時間帯で人と交流する確率が下がることが示されました。また、交流があった場合でも、自己開示の量が減少していました。
これは、孤独が「つながりを求めるサイン」である一方で、実際には、
・人と関わらない
・関わっても深い話をしない
という方向へ行動を押しやすいことを示しています。
「慢性的な孤独」は、この循環を強める
研究では、事前に測定された特性としての孤独感にも注目しています。もともと孤独を感じやすい人ほど、日常の中で起きるこの循環がより強く、より持続的でした。
具体的には、
・少し孤独を感じただけで、拒絶を感じやすい
・拒絶を感じると、孤独状態に戻りやすい
・孤独なとき、自己開示をより強く抑制する
といった傾向が見られました。
一方、特性孤独が低い人では、孤独を感じたあとに社会的関わりを回復させる方向へ動くケースも多く見られました。同じ「孤独」という状態でも、その後の軌道が大きく分かれていたのです。
孤独は、感情・認知・行動が絡み合った「循環」
この研究が示しているのは、孤独が単独で存在する現象ではない、という点です。
・感情(孤独)
・認知(拒絶の知覚)
・行動(交流や自己開示)
これらが短い時間スケールで影響し合い、小さなズレが積み重なって孤独を維持していく構造が描き出されています。
孤独は「性格だから」「環境のせいだから」と一言で片づけられるものではなく、日常の中で繰り返される微細なプロセスの結果として現れている可能性があります。
孤独を断ち切るには、「状態」を見る視点が必要かもしれません
この研究は、特定の介入方法を提示するものではありません。しかし、重要な示唆を与えています。
それは、孤独への理解を「属性」から「プロセス」へと移す必要がある、という点です。
孤独が強くなる「瞬間」
拒絶を感じやすくなる「タイミング」
人との距離が開いていく「連鎖」
これらを丁寧に捉えることが、孤独を単なる個人差ではなく、変化しうる状態として扱うための第一歩になるのかもしれません。
孤独は、わからなくても、理由はあります。
(出典:communications psychology DOI: 10.1038/s44271-026-00410-1)

