なぜこの公園では、気分がよくなるのか?

この記事の読みどころ
  • 公園の体験は五つのタイプに分かれ、レクリエーション・家族の時間や風景、健康・感情、美しさ、学びが含まれる。
  • 投稿の感情はほとんどがポジティブで、春と秋に特に高まる。
  • 研究は二万件以上の口コミを分析し、体験と感情のつながりを公園の特徴で見分けた。

公園で感じる気分は、どこから来るのか

都市の公園で過ごしたあと、気分が少し軽くなったり、逆にどこか物足りなさを感じたりすることがあります。ベンチで過ごす静かな時間、家族とのピクニック、季節の花を眺めた記憶。こうした体験は、単に「緑が多い」「設備が整っている」といった要素だけでは説明しきれません。

人は自然から、目に見えないさまざまな価値を受け取っています。本記事では、上海の都市公園を対象に、その「見えにくい価値」が人の感情にどのような影響を与えているのかを明らかにした研究を紹介します。この研究は、数万件におよぶソーシャルメディアの口コミを分析し、公園体験と感情の関係を丁寧に読み解いています。

文化的生態系サービスという考え方

研究の中心にあるのは、文化的生態系サービスという概念です。これは、自然環境が人にもたらす精神的な充足や意味、学び、楽しみといった、物質では測れない恩恵を指します。例えば、散歩やレジャーの楽しさ、美しい景色への感動、自然に触れることで得られる癒やし、環境について学ぶ機会などが含まれます。

これまで文化的生態系サービスは、アンケートやインタビューを通じて評価されることが多く、大規模な人々の感情や体験を捉えるには限界がありました。特に中国語のように、感情や体験を比喩的・間接的に表現する文化では、その把握が難しいとされてきました。

研究の舞台となった上海の都市公園

今回の研究は、上海にある五つの代表的な都市公園を対象に行われました。これらは規模や立地、成り立ちの異なる公園で、市中心部から郊外まで幅広く分布しています。歴史のある森林型の公園、新しく整備された大規模公園、水辺を特徴とする公園など、性格の異なる場所が選ばれています。

ソーシャルメディアから感情を読み解く方法

研究者たちは、中国の代表的な口コミサイトに投稿された、公園に関するレビューを収集しました。対象となった投稿は二年間で二万件以上にのぼります。広告や意味のない短文を除外し、自然な文章だけを分析対象としました。

そのうえで、文章の中にどのような話題や体験が含まれているのかを統計的に抽出し、それぞれを文化的生態系サービスの種類に分類しました。同時に、文章に込められた感情の強さや向きを分析し、段階的に数値化しています。

公園体験は五つのタイプに分けられた

分析の結果、都市公園での体験は大きく五つのタイプに整理できることがわかりました。レクリエーションと家族の時間、象徴的で想像力をかき立てる風景、身体的・心理的な健康に関わる体験、美しさや感情に直接訴える体験、そして学びや理解に関わる体験です。

圧倒的に多かったのは「楽しい」「気持ちいい」体験

投稿の内容を見ると、もっとも多く語られていたのは、家族や仲間と楽しむ時間や、自然の中でのびのび過ごす体験でした。一方で、学びや教育に関する体験は、全体としてはあまり多く語られていませんでした。

感情はほとんどがポジティブだった

感情分析の結果、公園に対する感情表現の大半は非常に肯定的でした。投稿の八割以上が、強いポジティブ感情を示しており、否定的な感情はごく少数にとどまっていました。

春と秋に、気分はより高まる

感情の強さには季節による違いも見られました。春と秋にはポジティブな感情が特に高まり、夏と冬にはやや低下する傾向が確認されました。

どの体験が感情を最も動かすのか

統計的な分析から、特に強くポジティブな感情と結びついていたのは、レクリエーションと家族の時間、そして象徴的で想像力を刺激する風景でした。

公園ごとに異なる感情のかたち

公園の種類によっても、感情を高める要因は異なっていました。森林や自然性の高い公園では、回復感が感情に強く影響していました。

見えない価値をどう活かすか

都市の中で自然が果たす役割は、数字や面積だけでは測れません。人がそこで何を感じ、どんな気持ちで帰路につくのか。その積み重ねこそが、公園という場所の本当の意味を形づくっているのかもしれません。

(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2025.1711498

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